スイス、EUとの包括的な協定パッケージに合意(スイス、EU)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月24日 16時20分
スイスのフィオラ・アムヘルド大統領と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は12月20日、スイス・EU間の関係を深化・拡張する包括的なパッケージ措置に関する交渉に合意したと発表した。交渉は、2022年3月~2023年10月末に行われた予備的協議で合意した「共通理解」に基づいて、両首脳の主導により2024年3月18日に開始した。その主な内容は、EUがスイスに対して既にEU域内市場へのアクセスを付与している5つの協定(航空輸送、陸上輸送、人の自由移動、適合性評価、農産物貿易)の更新だ。各協定は関係分野のEU法改正を反映し、随時見直ししていく。また、これらの協定には、紛争解決規定や、航空輸送、陸上輸送、電力の3分野に適用される国家補助規制に関する規定などが盛り込まれている。
今回の合意で特筆される主な新協定は次のとおり。
食品安全:食品サプライチェーンのあらゆる側面を網羅する共通食品安全圏の確立。
健康:欧州疾病予防管理センター(ECDC)や、早期警戒対応システムへのスイスの参加など、国境を越えた深刻な健康上の脅威への対処を可能にする。
電力:スイスの EU 域内電力市場への参加を可能にする。
財政貢献:スイスがEUの結束基金に拠出金を支払う仕組みを明確化。2030~2036年は年3億5,000万スイス・フラン(約612億5,000万円、CHF、1CHF=約175円)で合意。2025~2029年の移行期間は年1億3,000万CHFを支払うが、これはスイスが参加したプログラムやプロジェクトの相手国のEU加盟国に直接割り当てられる。
EUプログラムへの参加:ホライズン・ヨーロッパや欧州原子力共同体(ユーラトム)研究・訓練、デジタル・ヨーロッパなどのEUプログラムへのスイスの参加を可能にする。欧州委員会は2025年1月1日からスイスのエンティティ(事業体など)が応募できるよう移行措置を保証する。
交渉の焦点だった「人の自由移動」に関するスイス側の目標は達成された。すなわち、経済的需要に見合った移民制度の維持や、乱用防止の効果的なメカニズム導入による社会保障制度への影響の制限、犯罪行為による国外追放を規定する連邦憲法の条項の尊重だ。自由な移動による予期せぬ影響に対処するためのセーフガード条項も具体化した。また、派遣労働者の長期的な賃金と労働条件が確保され、現行の保護水準が維持された。
スイスはEUと今後も翻訳などの事務作業を継続し、交渉の正式な妥結は2025年春になる見込み。なお、スイス連邦参事会(内閣に相当)は2026年初頭に新協定に伴う関連法案の議会提出を目指している。
(パブロ・ダス、田中晋)
(スイス、EU)
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