日系宇宙開発企業アストロスケールの衛星、宇宙ごみへ世界初の接近開始(日本、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月1日 0時35分
日系宇宙開発企業のアストロスケールは2月22日、同社の商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が世界初となるスペースデブリ(宇宙ごみ)への接近を開始したと発表した。
同衛星は2月18日に米国のロケット打ち上げ企業ロケットラボ(カリフォルニア州ロングビーチ)の小型ロケット「エレクトロン」で、ニュージーランドの発射台から打ち上げられた(2024年2月27日記事参照)。大型のデブリ除去などの技術実証を目指す宇宙航空研究開発機構(JAXA)の商業デブリ除去実証フェーズIで、デブリへのRPO(ランデブ・近傍運用)を通じ、デブリの状況を調査する技術実証を目的として設計された。第2フェーズはデブリ除去実証で、2026年度以降の打ち上げを目標としている。
発表によると、同ミッションでRPOの対象となるデブリは、2009年に打ち上げられたH2Aロケットの上段で、全長約11メートル、直径約4メートル、重量約3トンの物体でありながら、宇宙を高速で移動している。対象デブリは非協力物体(注)で、地上で得ている情報が限定的なことに加え、位置情報を発信していないため、正確な位置情報の取得が難しい。
ADRAS-JはGPSを用いて近づける限界まで近づいた後、衛星に搭載されているセンサーを用いてさらにデブリとの距離を縮める。長期にわたって宇宙空間を漂うデブリの運動や、劣化度合いなどの撮影を行うとしている。
この技術に関し、アストロスケール代表取締役社長の加藤英毅氏は「このミッションで実証するRPO技術は、デブリ除去を含む軌道上サービスの中核となるものだ。本物のデブリを対象としてこれを実証することは、当社だけでなく、世界の宇宙産業界にとっても大きな一歩と言える。まさに、宇宙のロードサービス時代の幕開け」とコメントしている。
また、打ち上げを担当したロケットラボの創業者兼最高経営責任者(CEO)のピーター・ベック氏はアストロスケールに対し、「軌道上のデブリを減少させ、宇宙への安全なアクセスを確保する新しく革新的な方法への道を開くこの歴史的なミッションを達成したアストロスケールチームを祝福する。このような高度なミッションに必要な精密な軌道制御を可能にする専用の打ち上げサービスを提供できたことは、本当に名誉なことだ」とコメントした。
(注)ランデブ、ドッキングを実施する能力や機器を有さない物体のこと。
(谷本皓哉)
(日本、米国)
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