バイデン米政権、2035年までに温室効果ガス61~66%削減目標を発表(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月23日 10時50分
米国のバイデン政権は12月19日、2035年までに温室効果ガス(GHG)排出量を2005年比で61~66%削減する新たな目標を発表した。この目標は、2050年までにネットゼロ排出を達成するための道筋を示すものだ。
新目標は、2021年に設定した2030年までに50~52%削減する目標を更新したもので、目標達成に向けて国内全地域で、発電、建物、輸送、産業、農業、林業などの各部門での排出削減と経済成長の両立を目指す。メタンガスについては、2035年までに2005年比で35%以上の削減を見込んでいる。
バイデン政権は、インフレ削減法(IRA)とインフラ投資・雇用法(IIJA)による投資を通じて、クリーンエネルギー経済への移行を加速させてきた。これまでに民間部門から4,500億ドル以上の投資を引き出しており、各地で電気自動車(EV)用バッテリーや太陽光パネルの製造施設建設が進んでいる。2022年第3四半期(7~9月)以降のクリーンエネルギー関連の総投資額は2,640億ドルに達し、さらに4,350億ドル規模の投資計画が進行している。
州別でみると、テキサス州では風力発電が急速に普及し、ジョージア州やテネシー州、ノースカロライナ州ではEV製造が活況を呈している。また、19日には24の州・準州の知事が超党派連合を結成し、気候変動対策の新目標達成に向けた取り組みを継続する方針を表明した(注)。
しかし、トランプ次期政権下で現在の気候変動対策がどの程度維持されるのかは、ますます不透明感が増している(2024年11月26日記事参照)。ドナルド・トランプ次期大統領は1期目の政権時と同様に、パリ協定からの離脱を表明している(2024年12月12日記事参照)。
民間調査会社ロディアム・グループの分析では、現行政策が維持された場合でも、2035年までの削減率は38~56%にとどまる見通しだ。さらに、トランプ政権下で気候変動対策が撤回された場合、今後10年間の削減率は24~40%まで低下する可能性があるとしている。さらに、2035年までに家計の年間エネルギーコストが最大489ドル増加し、原油輸入も日量50万~110万バレル(7~31%)増加すると予測している。
(注)メーン、バーモント、ロードアイランド、マサチューセッツ、ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカット、メリーランド、デラウェア、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン、イリノイ、ミネソタ、コロラド、ニューメキシコ、アリゾナ、ワシントン、オレゴン、カリフォルニア、ハワイの22州と、グアム、プエルトリコの2準州。全米人口の54%、経済の57%を占めるとしている。
(藤田ゆり)
(米国)
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