1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

EU、医療データ空間法案で政治合意、研究開発目的で医療ビッグデータが利用可能に(EU)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月26日 2時5分

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は3月15日、EU域内に医療データの単一市場である「欧州医療データ空間」を設置する規則案に関して、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース)。規則案は、EU共通の診療記録形式と電子診療記録システムの互換性を規定し、全加盟国に医療データをやり取りするためのデジタルインフラ「MyHealth@EU」への参加を義務付けるもの。これにより、患者の診療記録、処方箋、検査結果などデジタル化された医療データへのアクセスが可能となる1次利用と、政策立案や研究開発の目的で、公的機関、研究機関、企業などに匿名化された医療データへのアクセスを認める2次利用が、EU全域で可能になる。

EUは、データ政策の一環として、分野ごとにデータへのアクセスや2次利用を認める欧州共通データ空間(注)の構築を目指している。現在14の分野で開発が進められており、医療データ空間はその第1弾となる。規則案は2022年5月に欧州委員会が提案したもので(2022年5月6日記事参照)、今後、両機関による正式な採択を経て施行される見込み。

両機関の交渉では、医療データは慎重に取り扱うべき個人情報であることから、特に2次利用での扱いが焦点となった。2次利用は、バイオ医薬品などの研究開発目的での活用が期待される一方で(2024年3月25日記事参照)、欧州議会はプライバシー保護の観点から懸念を示していた。欧州委案では患者が2次利用におけるデータ提供への不参加を選択できる規定はなかったが、欧州議会の要求により、最終的に不参加の選択が可能となった。ただし、公共目的でのデータ利用は認められるべきとのEU理事会の主張により、公共政策のほか、公共の利益に適う研究開発などにおいては、例外的に不参加を認めないことで合意した。1次利用においても、一部例外を除き、患者は医療従事者による医療データへのアクセスを拒否することが認められた。

また、欧州委案は、2次利用が禁止される利用目的として保険料の値上げや医療品の販売などを規定していたが、政治合意では、求人や融資のほか、差別やプロファイリングにつながる目的での利用が認められないことも明確にされた。

このほか、研究者がアクセスした匿名化された医療データから、患者の重大な疾患などを発見した場合、各加盟国に設置される医療データのアクセス管理機関を通じて通知することが可能となった。

(注)詳細は、調査レポート「EUの産業データ政策の概要 EUデジタル政策の最新動向(第2回)」を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください