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米USTR、USMCAの労働紛争解決パネルを相次ぎ設置要請、裁定は次期政権発足後に(米国、メキシコ)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年12月20日 13時20分

米国通商代表部(USTR)は12月18日、メキシコ国内の労働問題を巡って、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づいて、3件の労働紛争解決パネルの設置を要請したと相次いで発表した。

USMCAに設けられた「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」は、締約国内に所在する企業の事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで(注1)、労働権侵害の事実が確認されれば、USMCAの特恵措置の停止などの罰則が適用され得る。米国政府はメキシコ政府に対し、これまでに31件のRRMに基づく事実確認を要請している。このうち大半の事案では、労働権侵害の事実が確認され、両国政府や当該企業の協力の下で是正措置が講じられている。一方で、米国政府はこれまでに3件の事案で、メキシコ政府や当該企業の是正措置が不十分であることなどを理由に、RRMに基づくパネル設置を要請してきた(注2)。今回、パネル設置が要請された3件の主な内容は次のとおり。

1. メキシコ・グアナファト州の自動車用タイヤメーカーのピレリ・ネウマティコスの施設の事案。USTRは2024年8月に事実確認を要請し、メキシコ政府は10月に労働権侵害の事実を否認した。USTRはメキシコ政府の判断に同意せず、パネルの検証を求めた
2. メキシコ・グアナファト州の自動車用皮革製品メーカーのベイダー・デ・メヒコの施設の事案。USTRは2024年9月に事実確認を要請し、メキシコ政府は10月に労働権侵害の事実を一部認定した上で、是正措置を講じた。USTRはメキシコ政府の判断や是正措置に同意せず、パネルの検証を求めた
3. メキシコ・モレロス州の銃弾メーカーのインダストリアス・テクノスの施設の事案。USTRは2024年6月に事実確認を要請し、メキシコ政府は8月に労働権侵害の事実を否認した。USTRはメキシコ政府の判断に同意せず、パネルの検証を求めた

今後、USMCAの規定に従い、パネル設置要請から3営業日以内に今回の案件を担当するパネリストが選定され、被申し立て国のメキシコがパネルによる検証に合意した場合、パネルは30日以内に検証を行う必要がある。パネル裁定は2025年1月20日のトランプ次期政権の発足後となる見通しで、次期政権がパネルの裁定結果を踏まえてどのような姿勢を示すのか、次期政権のUSMCAや労働問題を巡る政策方向性を見極める上で注目される。

なお、USTRは同日に発表した声明した中で、「バイデン政権は労働者の権利保護を回避する目的で、雇用を海外に移転した企業を取り締まるため、前例のない措置を講じ、新たな執行ツールを活用してきた」と、同政権の掲げた「労働者中心の通商政策」を振り返った。また、執行ツールとして、(1)RRM、(2)1930年関税法第307条(注3)、(3)ウイグル強制労働防止法(UFLPA、注4)を例示した。

(注1)ただし、米国・カナダ間にはRRMは設けられていない。

(注2)直近3件目は2024年12月12日に、メキシコの採掘施設での労働問題を巡ってパネル設置が要請されていた(2024年12月16日記事参照)。

(注3)直近の1930年関税法第307条に基づく措置は、2024年12月6日記事参照

(注4)直近のUFLPAに基づく措置は、2024年11月25日記事参照

(葛西泰介)

(米国、メキシコ)

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