国家主席にラム公安相、国会議長にマン国会副議長が昇格(ベトナム)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月24日 11時30分
第15期(2021~2026年期)第7回ベトナム国会は、5月20日にチャン・タイン・マン国会副議長を国会議長に、同月22日にトー・ラム公安相を国家主席にそれぞれ選出した。これに先立つ18日、共産党の指導機関である中央委員会が両氏を推薦し、国会が正式に可決したかたちだ。最高指導部「四柱」(注1)の両ポストは、ボー・バン・トゥオン前国家主席、ブオン・ディン・フエ前国会議長の辞任後(2024年3月25日記事、2024年5月13日記事参照)、空席になっていた。
ラム氏は、1957年北部フンイエン省生まれ。公安でキャリアを築き、2016年から2期連続で政治局員(注2)と公安相を務めていた。公安相として、グエン・フー・チョン書記長の意向をくんで汚職捜査の中心的役割を担ってきたとされる。
マン氏は、1962年南部ハウザン省生まれ。南部カントー市党委員会書記や祖国戦線中央委員長(注3)などを経て、2021年から政治局員と国会副議長を務めていた。
共産党内の力関係が変わる可能性も
ラム氏は就任演説において、引き続き反汚職に尽力する姿勢を示した。反汚職運動は、一義的にはベトナムがより透明性の高い政治・行政システムを目指す運動で、違反した者の交代により改革が進むことを期待する声はある。しかし、党内の権力闘争という見方もあり、外資企業の投資判断や事業活動上のリスクとなった面もみられる。政府内の要職に空席をつくるだけでなく、関係者が責任を回避して判断をしない傾向が強まり、行政における各種許認可や手続きに遅延が発生したとされる。
ラム氏は当初、国家主席と公安相を兼任するとみられていたが、国会では国家主席選出に合わせて公安相解任の決議がなされた。公安相の後任は決まっておらず、チャン・クオック・トー副大臣が新しい公安相の就任まで、職務を代行する。
他方、人民軍出身のルオン・クオン氏が党の序列5位である書記局常務に昇進した(2024年5月24日記事参照)。BBCニュースは、汚職摘発により強大化した公安権力を軍が制御することで、共産党指導部内のパワーバランスが安定する可能性がある、と報じている(BBCニュース5月19日)。
(注1)ベトナムは、「四柱」とされる主要4ポスト(書記長、国家主席、首相、国会議長)による集団指導体制をとる。
(注2)政治局員は、中央委員から選出される党の要職。政治局は、党大会や中央委員会の決議の実現を指導・監督し、党の活動方針や人事を実質的に決定する。
(注3)党活動への大衆動員機関の代表。
(萩原遼太朗)
(ベトナム)
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