廃業が後を絶たない飲食店の傾向を探る
JIJICO / 2015年1月10日 15時0分
廃業が後を絶たない飲食店の傾向を探る
開業3年で約7割が廃業し、10年後も営業している店は1割程度
飲食事業は参入障壁の低いビジネスであり、誰でも比較的簡単に開業することができます。情報誌やインターネットを見てもわかるように、個人店・チェーン店に関わらず、新しい飲食店がどんどんオープンしています。
しかし、その廃業率は非常に高く、1年未満で閉店した割合は34.5%、2年以内で閉店した割合は15.2%。合計すると49.7%となり、約半数の飲食店が2年以内に閉店しているというデータもあります。さらに、開業3年では約7割が廃業し、10年後も営業している飲食店はわずか1割程度と言われています。つまり、「どんどん新店舗がオープンする一方、どんどんつぶれている」のが、飲食業界の実態です。
店舗数が過剰に増え、需要よりも供給が大幅に上回る
飲食店が廃業しやすい理由の一つは、「市場規模の縮小」です。外食産業の市場規模は1997年の約29兆円をピークに年々減少し、2013年の段階で約24兆円。ピーク時に対して8割程度の市場規模に縮小しています。(※「公益財団法人 食の安全・安心財団」統計資料より)言い換えれば、顧客が外食に使うお金が少なくなっているということです。
そして、飲食店が廃業しやすいさらに重要な理由の一つは、「競合店の存在」です。数十年前は、顧客の外食ニーズに店舗数が追い付いていなかったため、よほど問題のある店でなければ、それなりに繁盛していました。しかし、今は店舗数が過剰に増え、需要よりも供給が大幅に上回っています。さらに、惣菜、コンビニ、スーパーマーケットなどの中食や、宅配、通販なども飲食店の競合として台頭してきています。つまり、小さくなっている市場を、多くの店舗が奪い合っている状態なのです。
顧客にとって「選ぶ理由のないお店」が急増
競合が増えれば、顧客は多くの選択肢を持ち、より満足できる店を選ぶようになります。つまり、これまでよりも高いレベルの満足を提供しなければ、顧客がリピートしなくなっています。そんな中、顧客にとって「選ぶ理由のないお店」が急増しています。顧客が「選ぶ理由のないお店」は、オープン時や割引などの広告販促を行った際には集客できますが、それ以外では売上が上がらず、どんどん廃業に追い込まれています。
飲食店が長く経営を続けていくためには、リピーターの存在が必要不可欠です。競合が増えている中で、「他店ではなく、自店を選んでもらえる」コンセプトづくりが必要となります。今の時代の繁盛店は、立地・商品・サービス・価格などの面で、顧客にとっての「価値」を明確に確立できています。自店の価値をつくり、磨き上げていくことが、今後の飲食店経営に求められています。
(井澤 岳志/経営コンサルタント)
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