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どこまでがアウト?賭博とご祝儀の分かれ目

JIJICO / 2016年3月21日 11時0分

どこまでがアウト?賭博とご祝儀の分かれ目

どこまでがアウト?賭博とご祝儀の分かれ目

多くのプロ野球選手が声出しでの金銭のやりとりに参加

読売巨人軍が賭博問題で揺れています。既に現役選手4人の賭博行為が発覚していますが、円陣の際の声出しにからんで金銭のやりとりがあったことも、新たにわかりました。
これは、試合前に選手が行う円陣で、「がんばろう」などと声出しをした選手が、その日の試合でチームが勝つと円陣を組んだ他の選手から一人数千円をもらい、逆に負けると声出し役が他の選手に1000円ずつ支払うというもののようです。
選手間では、「円陣」や「声出し」などの隠語で呼ばれていたとも報道されています。

この点について、球団は、声出しは選手が輪番で行っていたもので、勝ち負けのどちらかに賭けるものでもない、目的もチームの士気を高めるため、金額も少額なので賭け事ではなく単なる験担ぎのご祝儀だとしています。
しかし、一般には、金銭を賭けているように見える行為が、違法な賭博なのか単なるご祝儀にとどまるものか、非常にわかりにくいところです。
前記のような球団の解釈は、法的に正しいものと言えるでしょうか。

賭博に関する法律的解釈

刑法185条は、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りではない。」と規定しています。
このため、巨人選手の行為が、「賭博」にあたるか、また仮に賭博にあたるとしても、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」といえるかが問題になります。

賭博とは、偶然の勝敗に関し財物を賭けること、を意味します。プロ野球の試合の場合には、勝敗に選手の技能が関係してきますが、選手の技能だけでなく、一定の割合では偶然性も勝敗に寄与してきますので、「偶然の勝敗に関し」とは言えるでしょう。
裁判例も、当事者の技量が関係する囲碁、将棋、麻雀いずれも賭博罪の対象としています。

声出しによる金銭のやりとりも賭博罪にあたり得る

さて、球団は、声出しは選手が輪番で行っていたものだから、勝敗に「賭けて」はいないとするようですが、これは少々疑問です。
声出しをする機会は輪番で回ってくるのかも知れませんが、勝てば自分が賭け金を総取りし、負ければ金銭を負担するというルールを承知した上声出しに参加している以上、賭博性はそれほど高くないとはいえ、「勝敗に関し財物を賭ける」ものとされる可能性も十分にあるでしょう。

では、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」といえるでしょうか。
この点球団は、金額が少額だといいますが、最高裁は、食事をかける場合などと異なり、金銭の場合には、金額の多少にかかわらず賭博罪が成立する解釈で一貫しています。
このため、声出しで皆が拠出したお金で食事にいくルールなどであれば別ですが、そうでなければ球団の反論は厳しいものがあります。

プロとして賭博と疑われる行為はすべきではない。

このように、実際に警察が動くかどうかはともかく、上記巨人選手の行為は、賭博罪が成立する可能性もある行為です。
また、賭博罪の成否にかかわらず、チームの勝敗で損得が生じる以上、賭け金が膨らんでくれば意図的に勝敗を左右するプレーをする動機が生じないとも限りません。

なによりこうした行為はプロ野球に夢や憧れを持つ子ども達を激しく裏切る行為です。
球団としてもプロ野球全体としても、厳しく反省を求められる事案だと思います。

(永野 海/弁護士)

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