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ブラックと言われないために…多様化する「職人」の労働時間管理を考える

JIJICO / 2018年9月13日 7時30分

ブラックと言われないために…多様化する「職人」の労働時間管理を考える

ブラックと言われないために…多様化する「職人」の労働時間管理を考える

自宅リフォームの際に感じた「職人の労務管理」の難しさ

私事ですが、最近自宅の水回りをリフォームしました。リフォーム中は、「職人」と呼ばれる人たちが多く出入りし、熟練した技術で作業をしていきました。職人さんは、朝9時に作業を開始し、その日予定されている作業が終わると引き上げていきます。職人さんたちの仕事を見ながら、「職人の労務管理は難しいだろうな」と考えていました。

「職人」とは、自分で習得した技術を使って物を作る人たちです。リフォームの技術は、1年やそこらで身につくとは到底思えませんでした。たくさんの訓練と経験を経て「職人」と呼ばれるまでになったのでしょう。

「見習い」期間の労働時間と賃金の取扱いは大きな課題

だとすると、いわゆる「見習い」期間の労務管理はどうしているのだろうというのが大きな疑問でした。ベテランの職人は、求められているレベルの物を限られた時間で作ることができますが、見習いはベテランの何倍もの時間がかかります。労働基準法に従えば、ベテランよりも仕事ができない見習いのほうが残業代ははるかに多くなってしまいます。

見習い期間の労働時間と賃金をどう扱うかは、会社にとっては非常に大きな課題だと思いました。「徒弟制度」があった時代には、修行や訓練の時間は労働時間とはみなされずに給料が払われませんでした。しかし、現在では労働基準法で徒弟制度は排除されています。

元々、職人は大工など建造物を作る人たちのことを言いましたが、「寿司職人」や「ケーキ職人(パティシエ)」といった人たちも多く存在します。これら食品業界の職人の労務管理にも、大工らと同じ問題が生じています。一日も早く一流料亭で出されるお寿司や高級レストランのケーキが作れる職人になるためには、業務時間だけでは到底足りず、別に訓練の時間が必要です。いわば、自分の腕を磨くためだけの時間とも言えます。その時間は残業と言えるのでしょうか。労働時間と評価すべきなのでしょうか。

職人の多様化・教育制度の確立・進化に伴う労務管理が求められる

一方で、時代は変わり、食品業界の職人は多様化しました。私が長年勤めていた大型ショッピングセンターでもケーキやお寿司は販売していました。鮮魚売場には昔ながらの「刺身職人」もいましたが、スーパーでは芸術的な船盛が作れる職人よりも、短時間で家庭用の刺盛パックをたくさん作れる腕を持った職人が必要でした。

教育訓練制度も確立されていたので、鮮魚売場にド素人の新入社員で配属されても、1年やればそれなりの技術は身につきました。ケーキは、工場から見た目も綺麗でおいしいものが直送されます。種類も豊富で、パティシエが作ったケーキよりも安く販売できます。一般の消費者が求めている食品業界の職人は少しずつ変化してきました。

また、昭和の時代の職人を目指す若者は、見習い期間をがんばり抜くことができました。しかし、今は見習い期間が長いと、多くの若者はやめてしまいます。昔は皿洗いやまかない食作りの下積みが当たり前だった寿司職人も、今は、早いうちからどんどん寿司を握らせて嫌になって辞めないようにしているという話も聞きます。時代の変化を考えると、職人にも労働基準法に基づいた労働時間管理ができるような働き方やしくみを作っていくことがこれからは必要だと思います。

(小倉 越子/社会保険労務士)

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