朝ドラ『虎に翼』への批判に反論。「政治的」「ビールを酔うほど飲む女性はいなかった」がトンチンカンな理由
女子SPA! / 2024年5月15日 15時46分
山田のこうしたイメージは、小津安二郎監督作『東京暮色』(1957年)の酒場で、ひとり酒をちびちび飲む姿まで地続きだ。
◆徳田秋声や谷崎潤一郎の文学作品
X上でのパトロールを続ける。今度は文学作品から。小説家の中沢けいがレファレンスとしたのは、徳田秋声と谷崎潤一郎。どの識者も口々にいう。あんな愚問が浮かぶくらいだから、映画も文学もろくに知らないんだろうと……。
実際、その記事の筆者が根拠としたのが、『男女7人夏物語』(1986年)。寅子にならって素直に反応すれば、まさに「はて?」だ。そもそも昭和10年代の話題なのだから、いきなり昭和後期である1980年代のテレビドラマの話をされても理解に苦しむ。
尾崎紅葉の門下で自然主義を代表する徳田秋声が1938年に発表した『仮装人物』の小夜子は、ウィスキーやらビールやらなんでも飲んで、酔っ払ってばかりいる。それから、昭和10年代の関西に暮らす上流家庭の4人姉妹を微細に描く谷崎潤一郎の『細雪』連載が始まったのは、時代が下って1943年。
◆手酌で飲んでいた描写
戦後、ベストセラーになる同作は、戦中、「中央公論」連載途中で陸軍省から掲載を禁止されたが、次女の幸子がビールを飲む人物として設定されている。映画でも文学でも昭和10年代までに酒を飲む女性がちゃんと表象されていたことになる。
実はその記事の意見にはもうひとつある。今度は寅子が手酌で飲んでいたことが問題ある描写だというのだ。当時の女性は男性から注がれることはあっても自分のグラスに自分では絶対に注がないと。
寅子の父・猪爪直言(岡部たかし)や母・猪爪はる(石田ゆり子)がそこは絶対にとめるべきだったというのだが、猪爪家のような裕福な家庭の女性がかなり自由に飲酒を楽しんでいたことは、『細雪』が示す通り。
あるいは、昭和10年代生まれのぼくの祖母は、下戸ながら、飲酒が好きな人は女性でも誰でも、人前で好きなように楽しんでいたことを証言してくれた。
◆瓶ビールをグラスに注ぐ動作がしっくりくる
1937年、「別れのブルース」をリリースした淡谷のり子にはこんな逸話まである。現在の東京音楽大学で声楽を学んだ淡谷は、ソプラノである自分が低い音域の声をだすために、レコーディング前夜、夜を徹してしこたま酒を飲み、声をガラガラにしたという。
日中戦争が勃発した年の流行歌手は、こうもファンキーだったのだ。「昭和10年代の女性はビールを飲んでたんですか?」なんてうっかり聞いたものなら、「あーた、寝ぼけてんの?」と淡谷の冷たい視線に射抜かれるだろう。
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