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高橋一生の肉声はこの世の悲しみを隠さない。『岸辺露伴』との出会いで見せた真骨頂

女子SPA! / 2024年5月22日 15時44分

◆高橋一生の声の魅力。ざっくりイケメン枠に入り切らない要因にも

高橋一生の魅力のひとつは声である。野田秀樹の舞台に出る俳優には、野田を筆頭に、澄んで高く、ピンと張った声の人が多い。松たか子も多部未華子もそうである。そのなかで、高橋は少し違って、やや低く、太い。半音下がっているように感じる。

イケボだとも言われているが、2018年の『ルーヴル美術館展 肖像芸術一人は人をどう表現してきたか』の記者発表会では、「眠くなる声」「こもりがち」と言われると発言している。ただ、意識して話せば、そんなことなく、落ち着いた低音で、それが浮ついてなくて地に足がついていていい。

一時期、ざっくりと演技派イケメン俳優枠にカテゴライズされかかっていたこともあった高橋だが、そこに入り切らない要因はその声にもあったと感じる。

イケメンにカテゴライズされる俳優の声はたいてい明るく高いか、ウィスパーで、耳障りがいいのだ。高橋の場合、やや童顔な感じの見た目に、意外と低い声で、アンバランスな感じが、逆にバランスがいい。

◆高橋一生の肉声は、この世の悲しみを隠さない

そして、高橋一生の声が『兎、波を走る』では生きてくる。言葉をしっかりとはっきり聞かせながらも、どこか重苦しく、何かを引きずっているようで、気にかかる。

高橋一生の肉声は、この世の悲しみを隠さない。

筆者はかつて、高橋一生を「悲劇俳優」だと書いたことがある。大河ドラマ『おんな城主直虎』(17年)の第33回、「嫌われ政次の一生」のときだ。

彼が演じた小野但馬守政次は、主人公・井伊直虎(柴咲コウ)の幼馴染みで、生涯、彼女を支え続ける。史実では井伊家を裏切った人物とされているが、ドラマでは、敵の目を欺くために偽悪的に振る舞い、散っていった話になっていた。他者のために身を挺(てい)する物語は珍しくはないが、真実を知るのは直虎と政次だけで、周囲には政次が悪人という芝居をして見せ、裏切り者の烙印(らくいん)を押されて死んでいく、まさに墓場まで持っていくところが最高の甘美なる悲劇だった。

◆『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』画家役こそ悲劇俳優の真骨頂

精神的にも身体的にも能力的にも強いけれど、それを振りかざすことなく、内に秘めたままにする。高橋一生の声の響きには重みがある。

『直虎』から6年、2023年5月、主演映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が公開されたとき、政次を彷彿(ほうふつ)とさせる場面があり、高橋一生ファンは喜んだ。監督が『直虎』の演出を手がけていたこともあり、イメージが重なった。

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