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「維新による文化軽視」と批判もあるが実情は…“博物館の収蔵品廃棄”の知事発言うけ館側が明かす

女子SPA! / 2024年7月19日 8時44分

 つまり民俗資料の対象となるのは、一般の人が暮らしの中で使ってきたモノや行なってきたコトだ。絵画や美術品のようにわかりやすい特別感や華やかさがないため、その価値が伝わりにくい部分もある。

 しかし、同第三条には「政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない」ともある。奈良県の今回の資料廃棄はこの内容にも抵触する可能性はないのだろうか。総務学芸課長の政木一美さんに館の見解を聞いた。

◆じつは昭和50年代から続く問題だった

「当館の見解としては、知事の発言にニュアンスの程度はあるものの、資料を一部無計画に集めてしまっていた面もあることは確かだと受け取っています。正直、一般的に想定される収蔵品の整理レベルに達しておらず、これから台帳整理に取り組む部分もあります」

 じつは、収蔵品の未整理は昭和50年代から続いている問題だという。

「私が赴任した2021年時点では、バックヤードにも通路にも未整理の資料が溢れていて、古民家内にも物置同然に資料が置かれていました。そこで、学芸員と事務方が協力して整理し、地域の閉校した学校等を資料の仮置き場として借りていたので、追加で移送しました。ですが、仮置き場なので、いつかは出て行かなくてはいけません。

当館の収蔵品問題は、じつは昭和50年代から言われていました。寄付や委託の依頼があった際に、例えば蔵の中身を丸ごと引き取ったりしていたのですが、本来その時点で行われるはずだった資料の取捨選択やデータ整理が不十分で、大量に保管してしまっているのが現状です。なので、整理が足りていたかというと、不十分な状態ではありました」

◆館の存続のため、痛みを伴う対応は避けられないのか?

 その一方で、民俗資料の特徴と有用性をこのように語る。

「ただ、民俗資料には点数を多く保存し比較をすることで、暮らしの変遷が見えてくるという特徴があります。さらに、公共性が高く、触れられる文化財でもあり、郷土を知るために適しているという強みももっています。だからこそ、当館にしかできない展示もあります。

 私は事務方ですが、資料の廃棄は学芸員にとって大変心が痛むことだと理解しています。1点廃棄するのでさえ、辛いんです。ですが今は、廃棄処分することも検討せざるを得ない状況です。収蔵品問題はどこの博物館も多かれ少なかれ抱えていますが、当館においては殊に、しなくてはならなかったことを先延ばしにしてきたツケが回ってきたという面があります」

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