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朝ドラが同性愛を描くのは「思想の押し付け」の声も…『虎に翼』批判に頭が痛くなるワケ

女子SPA! / 2024年8月24日 8時44分

 戸塚は作家・三島由紀夫を決定づける記念碑的一作『仮面の告白』を参考にしたようだが、同作の主人公は幼少期から男性への性的志向を自認し、グイド・レーニが描いた『聖セバスチャンの殉教』など、美しい男性の肉体が深手を負うことに大きな興奮を覚える。ここには三島自身の英雄的な死への憧れをダイレクトに反映されている。

 対する轟はよねに「(花岡が)兵隊に取られずに済むと思うと嬉しかった」と語っている。轟が三島的な内面性の人物ならむしろ花岡の華々しい戦死(英雄的な死)を望んだはずである。戦後の男性同性愛というと確かに三島由紀夫は理解の一助になるが、轟太一という人の内面が三島由紀夫的かどうかについては慎重になるべきだ。

◆棚上げになる結婚に取り組む意図

 第51回放送後、脚本家の吉田恵里香は、X上で轟のセクシャリティについて「同性愛は設定でもなんでもない」と補足的に言及している。ひとりのキャラクターの性自認にとことん向き合う脚本家の態度からすると、「兵隊に取られずに済むと思うと嬉しかった」という台詞は、むしろ三島的人物の反語的な響きを伴っている。

 もちろん戸塚の役作りでのアプローチとしてはある程度、三島的要素を認めつつ、本作が表象する同性愛については別の視点から考える必要がある。そもそも一度保留になっていた轟の性自認が、第100回になって寅子の再婚の話題からなぜ再び描かれるのか?

 多くのBLドラマが現実問題として処理しきれないテーマが結婚なのだ。シーズン1当初はかなり誠実な製作態度が感じられた『おっさんずラブ』(テレビ朝日、2018年)でさえ、シーズンを重ねるごとに結局は結婚を棚上げにしてしまった。

 BL的でありながら、中年男性たちの現実問題に向き合った『きのう何食べた?』(テレビ東京、2019年)は例外的な作品だったが、結婚とはBLドラマの枠内にには収まりきらない概念である。

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京、2020年)でBLドラマの脚本を経験している吉田だからこそ、『虎に翼』では、寅子の再婚を契機としながら男性同性愛者たちをとりまく現実の課題を描くことを意図しているように筆者は思う。

◆思想の押し付けなのか?

 第100回から週が明けた第21週第101回で、轟から相手の男性・遠藤時雄(和田正人)と交際していることを伝えられ、寅子はやや困惑ぎみの表情を浮かべる。寅子は「お二人を見て何とも言えない顔をしてしまったと思うの」と彼女なりの謝意を表すが、戦前、戦中に裕福な家庭で育った寅子のことだから、男性同性愛者に出会ったのは生まれて初めてのことなのだろう。

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