1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

松本潤が大河ドラマ後に“演劇界の巨匠”の舞台へ出た必然。18年前の演劇出演時と変わらないものとは

女子SPA! / 2024年10月8日 15時46分

巨匠・野田に意見を言うのはなかなかおそれを知らない気もするが、完璧の美学を持つ人がいてもいいし、手こずることを愛する人がいてもきっといい。

『正三角関係』では三兄弟の生き方はそれぞれ違う。富太郎は花火を作り、威蕃は物理学者を目指し、在良は神に仕える者になる。また、富太郎の父殺しの裁判では不知火弁護士(野田秀樹)と盟神探湯検事(竹中直人二役)が無罪か有罪かで対立する。また、長澤まさみは、神に仕える生真面目な青年と、富太郎と父に取り合いされる奔放で妖艶なグルーシェニカという真逆に見える二役を演じ分ける。

3つの生き方や2項対立に世の摂理をうっすら感じると同時に、演劇界の神のような野田に向かって自論を臆することなく提案する松本の姿にもまた世界の一端が見えるような気がするのである。

◆『どうする家康』のあとで野田の舞台に出た必然

混沌(こんとん)とした世界のなかで誰も失敗しない完璧さを求める松本潤に、筆者は昨年彼が演じた大河ドラマ『どうする家康』(NHK 23年)の徳川家康を思うのである。

家康は子どもの頃からずっと戦争の悲惨さを目の当たりにし続けたすえ、豊臣との最後の決戦・大坂の陣で乱世を終わらせようとする。大砲によって破壊された大坂城の惨状に愕然(がくぜん)としながらも、そこから戦のない江戸幕府が264年もの長きにわたって続いた。その礎を築いたのが家康である。

『正三角関係』はロシアの物語を下敷きにしながら極めて日本の切実すぎる物語なのだが、それをロンドンで上演したら(10月31日〜11月2日)、イギリス人はどう見るだろう。

もしもイギリスの観客が、松本潤は、英国におけるBBCのようなNHKで徳川家康を演じた俳優であるという情報を得たならば、彼が『正三角関係』で演じた役に1本の補助線が引かれるのではないだろうか。

大河の前に、NODAMAPに出るのではなく、大河のあとでNODAMAP に出た必然がそこはかとなくあるように感じてしまうのである。

◆カーテンコールで松本は野田秀樹を

さて、今回の舞台でもうひとつ印象的だったのは、カーテンコール。松本は彼目当てに来た観客たちに作、演出、出演と八面六臂の大活躍をした野田秀樹を紹介するような仕草をしてみせる。僕の大好きな野田秀樹さんです、本当の主役は野田さんなんです、というように。

それがなんともいい感じだった。だって、例えば、野田秀樹のスローモーションの動きは、出演者たちの誰よりも身体に負荷をかけて見えて年季の違いを感じさせるのである。

<文/木俣冬>

【木俣冬】
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください