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難病を抱えながらも結婚&独立した堂本剛の“苦悩“…27年ぶりの「映画単独主演」を決めたワケ

女子SPA! / 2024年10月26日 15時45分

 さらに、沢田は映画の冒頭で自分の境遇を皮肉たっぷりに口にしたり、何かを諦めて日々を生きているような厭世的な印象も強い。それは自身の心が傷ついている、または人生に疲れ切っているからではないか、だからこそ他人の痛みにも敏感なのではないか、と想像がおよぶようにもなっている。

 その皮肉っぽい言い回しに知的なセンスがあり、独特のユーモアにつながっていて、同時に人を傷つけるような印象がなく、優しさを感じさせるということが、個人的にバラエティ番組で見かけていた堂本剛に抱いていた印象にかなり近いものだったのだ。

◆嫉妬と嫌悪を募らせる綾野剛の気持ちもわかる

 綾野剛演じる隣人の売れない漫画家も重要だ。彼は社会的に成功できず、“パパッと描いた○のおかげでラクをして成功している(ように見える)”沢田にはっきりと嫉妬と嫌悪をつのらせ、完全に間違った行動に出てしまう。

 その心理もまた極端なようで、やはり自身の努力が実らず、身近な誰かや有名人に「なんであいつが成功するんだ」と思ってしまうような、普遍的なものといえる。

 それでいて沢田と完全に対立しているわけではなく、「お互いにウザいと思っているようで、だからこそ気になっていて、完全には嫌いになりきれない」ような、限りなく友情に近い関係が築かれていることが、とても尊い。

◆「今」の堂本剛を重ね合わせる理由

 実際に荻上直子監督は本作を手がけるにあたって、堂本剛の過去のインタビュー記事をたくさん読み、その中で「20代~30代の頃は仕事が忙し過ぎて、自分というものがわからなくなってしまい、とてもツラい時期があったけれども、音楽に助けてもらった」といったことを知って、そこから「自分がわからなくなってしまう人のお話」として、今回の映画のストーリーをふくらませていったのだそうだ。

 筆者個人は、前述したような映画の中の沢田が傷つき疲れていて、それでも優しさを感じさせる様は、荻上監督が参照した20代~30代の頃の堂本剛はもちろん、「今」の堂本剛を重ねるところもあった。

 例えば、2017年に突発性難聴を発症したために一時活動を休止し、復帰後も後遺症と向き合い続けており、その告白に勇気づけられたという人は多い。さらに、2024年はももいろクローバーZ・百田夏菜子と結婚、さらにSMILE-UP.を退所して個人事務所を設立するという、大きな転機を迎えている。

 客観的に見てもつらい時期が続き、その大きな転機を経て後遺症を抱えながらも音楽活動を続けていく堂本剛の姿は、映画『まる』の劇中で本人の意思とは異なることで評価をされ続け、困惑をしつつも流されていた沢田が、「それでも」自身が本当に望んでいるアートへの思いを捨てきれない様ともシンクロしている。

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