定食屋の魅力は「さもない料理」にある… 食を愛する文筆家が“おいしい”を語り合う
女子SPA! / 2024年12月29日 15時43分
それって文学も私同じだなって思っていて、台所も本当にそのさもない日常を丁寧に作り取るとか、例えば料理本ならメインディッシュじゃないところを書きとることで実は多くのことが変わるんだなって。
原田:そうですね。さもない感じっていうのが……。
私、田辺聖子さんの小説が凄く好きなんですけど、田辺さんの小説の中で、男性が、女性と別れた後に別居するんですけど、その時に男性がパッと思い浮かぶのが……小松菜と油揚げを煮たような感じ。それが私の中の一番の「さもない料理」というか……(笑)
誰でもできるんだけど、おいしく作るのって意外とセンスがいる。そういうのを女性と別れた後の男性が求めて、だけどどこにも売ってないし、自分でもうまく作れないって嘆くようなシーンがあって。
大平:なんかそういう、メインの話じゃないところを丁寧に書き込む大事さを、歳を重ねてから気付いて。そこを書いた時に、遠くの距離が見えるというか……。近くに見えるものを丁寧に書くと、さらに際立つんだなあと勉強になりました。
原田:ありがとうございます。
◆「食」から始まる創作の原点
大平:原田さんが料理を題材にしたきっかけは?
原田:20代のころは、飛田和緒さんという料理研究家の方が料理教室をされてて、雑誌か何かで見つけて、雑誌の編集部に電話かけて、当時携帯がない時代なので(笑)
予約取って、何か月か料理教室に通わせてもらって。そういうのもあって料理は好きでした。
大平:料理の仕事したいって考えてたんですか?
原田:したいと思ってたんですね。だけど……でも先生の近くにいて本を見て、同じように作ることはできるけど、まったく新しい料理を考えることはできないというか。
先生は本当にちょっとした残り物から新しい料理を作る……あと一つひとつの料理を作るのもお上手で、その時に料理の仕事するっていうのは全然違うんだなって学びました。
◆以前は別の仕事についていた二人
大平:その時は文章の仕事は考えてなかったんですか?
原田:そういうのもできたらいいなって思ったら、20代の後半、私、秘書の仕事してたんですけど、秘書は当時、年とってから長くできるような仕事じゃなかったし、何か別のことできないかなって探している時期だったんですね。
大平:人生で探した時期って何年くらいあったんですか?
原田:26歳から28歳くらいからずっと。29歳か30歳くらいで結婚して北海道に転勤したんで。それくらいですね。大平さんはそういうのありますか? 迷い時期というか。
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