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定食屋の魅力は「さもない料理」にある… 食を愛する文筆家が“おいしい”を語り合う

女子SPA! / 2024年12月29日 15時43分

大平:あります。私は愛知の短大で社会福祉を学んだ後、児童養護施設に勤めたんです。文章書きたかったけど文学部は行けなかったので、次に面白いものと考えた時に社会福祉だなって思って。

 面白かったけど、やっぱり書く仕事もしたいって思って20歳から26歳までは迷いました。それで26歳で上京して、編集プロダクションに入って。

原田:そこから書く方に?

大平:はい。

◆フリーになって見つけた創作の「裏テーマ」

原田:そうなんですね。やっぱり台所の話とか食の話が多いんですか?

大平:いや、全然なんです。私、料理をテーマにした書籍はこれが初めてで。26歳から30歳くらいまで編集プロダクションにいて、出産と同時に退職したんですよね。子供を育てながら無理だなと思って。

 で、フリーになったんですけれども、その時はがむしゃらに7~8年やって、やっぱりちょっと違うなという……。これは誰でもできるし、歳を取ったら若いライターさんに変わっていく。

 自分しか書けないものって何だろうって思った時に、大量生産、大量消費に対岸にあるもの「今書いておかないと消えてしまうものを書こう」って決めたんですよね。それから取材中も、裏テーマがあるとちょっとだけ文章が変わるというか。

 それを編集者の方が面白いって言ってくださったり、小さいものが重なって、書籍の話になって、著書は30歳から一冊ずつは出してたんですけど、この裏テーマにたどりつくまで5年くらいかかりました。

◆「定食屋」選びの舞台裏

原田:今回思ったんですけど、『そこに定食屋があるかぎり』というこちらの本とかも、定食屋さんたくさん出てますけど、それってどういう風に選ばれたのですか?

大平:編集者さんと私が別々に名前も言わずに気になる定食屋さんがあれば取材帰りや、夫、友達と行ったり。口コミで町に愛されてるできるだけ長くやっているところを探して行っていました。

 で、写真を撮り、感想を書き、SMSメッセージで送る。編集者さんとお互いが「そこいいですね」ってなったら初めて依頼をかける。だけど、凄い勢いで断られることも多いんです。

原田:結構断られたこともあるんですね

大平:めちゃくちゃあります。最初は言わなくて、後で「実は」って取材を依頼する時に初めて声かけますね。本当に何軒かはメールもできないので、編集者さんが手紙を書いたり、直接行って依頼することもあります。

【原田ひ香】

1970年神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞。07年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。著書に『ランチ酒』『ランチ酒 おかわり日和』『ランチ酒 今日もまんぷく』『三千円の使いかた』『口福のレシピ』『一橋桐子(76)の犯罪日記』、「三人屋」シリーズなどがある

【大平一枝】

作家・エッセイスト。長野県生まれ。 市井の生活者を描くルポルタージュ、 失くしたくないもの・コト・価値観を テーマにしたエッセイを執筆。 連載に「東京の台所2」 (朝日新聞デジタルマガジン&w)など

(※本記事は2024年11月7日、本屋B&Bで行われた対談を再構成したものです)

<構成/女子SPA!編集部>

【女子SPA!編集部】
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa

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