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「汁もの+ご飯+お漬物=汁飯香」が健康の秘訣、長寿県・長野在住の料理家の食卓

週刊女性PRIME / 2024年6月1日 6時0分

食べごたえのある汁が主役の“汁飯香” 撮影/竹内章雄

食事の理想は、“飯”+“一汁三菜”ですが、そうはいかないときもあります。これをぐっと凝縮させて“汁飯香(しるめしこう)”、つまり汁もの・ごはんもの・お漬物の形にすることも多いんです。

 手間なく用意できて、しみじみとおいしく、ゆっくり味わえばおなかも満足します」

 と言う横山タカ子さん(76)。長野県に伝わる郷土食の“守り手”として注目を集めている料理研究家だ。

“汁”や“飯”を具だくさんに

「毎日、今日は何を食べようか、どう組み合わせようか、と考えるのは、楽しくもあるけど悩ましい。“汁飯香”ならシンプルなので、面倒がなくストレスもありません」

 “汁飯香”にはポイントがある。“汁”や“飯”に、具材をしっかり混ぜ込むこと。

例えば、豚汁なら、タンパク源になる肉も、食物繊維たっぷりの根菜も一緒にとることができます。ごはんを主役にしたいときは、肉や魚、野菜、大豆製品を混ぜたり、のせたり、炊き込んだりして、食べごたえと栄養をプラス。

 そして“香”、お漬物には、季節の野菜を使って旬ならではの甘みやコク、ほろ苦さといった風味を存分に楽しみます。

 お漬物のことを昔から“香の物”というのは、塩やしょうゆなどで漬けることによって、野菜の香りが際立つからでしょう。さらに、発酵が進めば、なんともいえない食欲をそそる香りがするんですよ」

 夫婦ともに元気で暮らせている健康のヒケツは紛れもなく「食事」。長年作り続けているレシピを紹介してもらった。

郷土でなじみの素材を

「汁ものや煮物の味の決め手は、“だし”。私は煮干しをもっともよく使います。鍋で煮出すこともありますが、便利なのは“水だし”。保存容器に煮干しと水を入れて冷蔵庫で保存しておくだけのほったらかしです」

 いつでもさっと取り出して使え、少量のだしが必要なときや、茶碗蒸しなど冷たいだしが欲しいときにも重宝する。

「カルシウムをしっかりとりたいときには、煮干しをまるごと粉状にした“煮干し粉の水だし”が便利。ただし、汁がにごるので、すまし汁には不向き。

 濃厚なだしをとりたいときには、煮干しに昆布、干ししいたけ、大豆をブレンドした“旨(うま)だし”がおすすめ。薄味に仕上げたいすまし汁や煮物に向いています」

 保存の目安は、どれも冷蔵で3日ほど。そんなだしを使いつつ、郷土でなじみの素材を使った“汁もの”を2つ紹介する。

「“いり菜汁”は青菜を炒めて汁仕立てにしたもの。信州では野沢菜を使い、大鍋でたっぷり作ります。ここでは、みそ仕立てにしてみました」

 野沢菜の代わりに小松菜などでもよいそう。

 もうひとつは、すんきのみそ汁。すんき漬けは、長野県木曽地方に古くから伝わる保存食。

「赤かぶの葉を乳酸発酵させたもので、漬物ながら、塩をいっさい使わないのが特徴です。すっきりした酸味があり、そのままお茶漬けにするのはもちろん、みそ汁に入れるのがお気に入りです」

 すんき漬けには、20種類以上の乳酸菌が多く含まれているといわれているそう。おすしを作る際、刻んですし飯に混ぜるのもおいしい。

ごはんだけでも幅広いバリエーション

 普段は五分づき米や玄米を食べているという横山さん。

「玄米のぬかの部分にはビタミンやミネラル、食物繊維など栄養成分が豊富に含まれています。この玄米を精製したのが分づき米で、ぬかを半分ほど残したのが五分づき米。ぬかの栄養を残らずとるには玄米がいいのですが、表皮がかたいので、白米に比べて浸水時間を長く要し、炊き上がりまでの時間も倍くらいかかります」

 ちなみに、五分づき米は、 白米と同じ炊き方で大丈夫。

「玄米や五分づき米に抵抗があるなら、白米に大豆や雑穀を加えると、ぬかの代わりとなる栄養分が補充され、風味もよくなります。大豆はゆで大豆を、雑穀は市販の雑穀ミックスを使います。大豆と雑穀を一緒に加えて炊いてもおいしいですよ」

 炊いたごはんは、主食でありながら、肉や魚介、野菜といった具材を合わせることで、主菜にも副菜にもなってくれる懐の深さがあるという。

「気軽な混ぜごはんや炊き込みごはん、のっけごはんは毎日の食事に、もち米で作るおこわや、旬の食材を使ったすしは季節感を楽しめるごちそうですね」

 長野でよく食べられている「梅」と「くるみ」を使った“刻み梅ごはん”と“くるみとれんこんの炊き込みごはん”の2品は横山家の定番。

「青い小梅が出回り始めたら、私が作るものの一つに、信州ではおなじみ“カリカリ小梅”があります。私はやわらかい梅干しも漬けますが、この辺りではみなさん、かたい食感のカリカリ小梅を漬けるんです。梅雨から夏のお昼の定番は、カリカリ小梅のおにぎりなんですよ」

 さっぱりとした酸味は、夏バテを吹き飛ばしてくれる。

「朝食用にごはんを炊いて、残ったごはんにカリカリ小梅を細かく刻んで混ぜておにぎりにすれば、抗菌効果でごはんが悪くなりにくい。お弁当にもぴったりですし、梅雨時から夏にかけて、元気のもとであり、必需品です」

 カリカリ小梅は冷蔵庫保存で、約1年もつという。一方の“くるみとれんこんの炊き込みごはん”。長野はくるみ栽培に最適な風土で、古くより良質のくるみを多く産出する日本有数の産地ということで、利用する機会も多い。

「ごはんに具を炊き込むと、素材のうまみがしみ込んで、 ごはんをいっそうおいしく食べられます。炊き込みごはんの米はもち米でも。もち米2合に水150mlと覚えておくといいですよ。腹もちもよくて満足感もひとしおです」

サラダ感覚で手軽に野菜を

 お漬物は、横山さんにとって食卓になくてはならないもの。

「旬の野菜がおいしく食べられるうえ、ほどよい塩けがごはんに合い、箸休めにも、お茶請けやお酒のつまみにもなる。信州育ちの私は、子どものころからお漬物に親しんできました。3度の食事にはもちろん、お茶の時間にもすべて母の手作りのお漬物がありました。その味を引き継いで、精進してきた私がいます」

 冬が長く、その間、野菜がとれない信州では、夏から秋にかけて収穫した野菜をいかに使いまわすか考え、お漬物という保存食を作ってきた。

「同じ野菜でも、塩漬け、ぬか漬け、酢漬けと手を替え、味を変える工夫をする。そうした先人の知恵で、暮らしが支えられていると思っています。お漬物仕事をしていると、季節のうつろいを肌で感じることができるのもうれしいところ。

 春が来ると喜び勇んで山菜摘みに出かけて春の香りをビンに閉じ込め、夏には夏野菜をどっさり買い込み、秋冬用のお漬物にしたり。晩秋からは、春先まで食べまわすためのお漬物を漬け込みます」

 そうしているうちに、よりおいしく簡単に作れるアイデアも次々に湧き、横山さんのお漬物は進化してきたという。

「まずは30分~1時間でできる即席漬けから始めてみると敷居が低くなるでしょう。食卓にさっぱりしたお漬物があれば、ごはんが進むうえ、野菜を補充する役割も果たしてくれます。気軽に作って、日々の習慣とされるといいですね」

 そこでサラダ感覚で野菜が食べられる。きゅうりとなすを使った即席漬けを紹介してくれた。

「きゅうりは、にんにくの香りを移した油を使って、風味とコクをアップさせます。表面に切れ目を入れ、味しみよく。なすは塩漬けで飽きのこない味わいに。水分とともにアクが出るので、よく絞りましょう。その塩漬けを甘酢に漬けて、マイルドな味にするのもいいですね」

食べごたえのある汁が主役の“汁飯香”

 汁ものに肉や魚などタンパク源を加えると、しっかりメインに。 鮭と根菜を組み合わせ、酒粕+みそでコクを出しました。そのぶん、ごはんや即席漬けはさっぱり味にして、バランスよく。

鮭と根菜の酒粕みそ汁

材料(2~3人分)
・生鮭……2切れ
・大根……6cm(180g)
・にんじん……1/3本(60g)
・ごぼう……1/2本(40g)
・長ねぎ……小1本
・酒粕……大さじ2
・みそ……大さじ1
・煮干しだし……2と1/4カップ

【作り方】

(1)大根は5mm幅のいちょう切りに、にんじんは5mm幅の斜め薄切りにする。ごぼうはささがきにして水洗いし、ざるにあげる。

(2)鍋にだしと(1)を入れて中火にかけ、野菜がやわらかくなるまで煮る。

(3)3等分に切った鮭を加え、火を通す。

(4)酒粕、みそを順に溶き入れる。斜め薄切りにした長ねぎを加え、ひと煮立ちさせる。

ゆずの混ぜごはん

材料(4~5人分)
・温かいごはん……2合分
・ゆず……1個

【作り方】

(1)ゆずは皮を薄く削って細かく刻み、実は果汁を搾る。

(2)ごはんに(1)を加えて混ぜる。

大根のゆず漬け

材料(作りやすい分量)
・大根……1/2本(600g)
・ゆず……1個
 A〔はちみつ……大さじ4、塩……大さじ1、ゆず果汁+酢……合わせて50ml、水……40ml、赤唐辛子(小口切り)……1本分〕

【作り方】

(1)大根は薄いいちょう切りにする。ゆずは皮をむいて細切りにし、実は果汁を搾る。

(2)保存容器に(1)の大根とゆずの皮、Aを入れ、ふたをして1時間以上置く。

だしが決め手【汁もの】

〜郷土でなじみの食材を〜

野沢菜のいり菜汁

 漬物だけじゃない野沢菜の使い方

材料(作りやすい分量)
・野沢菜……1束(300g)
・水……4カップ
・煮干し……10尾(16g)
・木綿豆腐……1/2丁(150g)
・菜種油……大さじ1
・みそ……大さじ2と1/2
・七味唐辛子……適宜

【作り方】

(1)野沢菜は3cm長さに切る。

(2)鍋に油を中火で熱し、野沢菜を炒める。油がまわったら分量の水と煮干しを加えて煮て、煮立ったら豆腐をひと口大にちぎり入れる。

(3)具が温まったら、みそを溶き入れる。器によそい、好みで七味唐辛子をふる。

すんきのみそ汁

 すんきの酸味とうまみがだしやみそに合う

材料(2人分)
・すんき漬け……50g
・煮干しだし……1と1/2カップ
・みそ……大さじ1

【作り方】

(1)すんき漬けは軽く絞って1cm幅に切り、根元のほうは薄切りにして器に入れる。

(2)鍋に煮干しだしを入れて中火で煮立たせる。みそを溶き入れてひと煮立ちさせ、(1)に注ぐ。

食感も楽しい【飯もの】

〜ごはんだけでも幅広いバリエ〜

刻み梅ごはん

 おにぎりや弁当にもおすすめ!

材料(2人分)
・温かいごはん……1合分
・カリカリ赤梅漬け……3個
・梅漬けの赤じそ……大さじ1

【作り方】

(1)カリカリ梅は種を除き、粗みじん切りにする。

(2)ごはんに(1)と細かく刻んだ赤じそを加えて混ぜる。

くるみとれんこんの炊き込みごはん

 “カリッ”と“シャキシャキ”の歯ごたえがたまらない

材料(4~5人分)
・米……2合
・くるみ……100g
・れんこん……1節(170g)
・にんじん……1/2本(70g)
・油揚げ……2枚
 A〔酒……大さじ2、薄口しょうゆ……大さじ1、塩……小さじ1/2〕

【作り方】

(1)くるみは生であれば、フライパンでからいりする。

(2)れんこんは5mm幅の輪切りにしてから4~6等分に切る。にんじんは小さな拍子木切りにする。油揚げは熱湯にさっと通して油抜きし、ひと口大の短冊切りにする。

(3)米は洗って30分ほど浸水させ、ざるにあげる。炊飯器の内釜に入れてAを加え、2合の目盛りまで水を注ぐ。

(4)(1)、(2)を広げて入れ、炊く。炊き上がったらさっくりと混ぜる。

まずは即席漬けから【香もの】

〜サラダ感覚で手軽に野菜を〜

きゅうりのにんにくしょうゆ漬け

 コクのあるにんにくしょうゆの風味

材料(作りやすい分量)
・きゅうり……2本(200g)
・にんにく(粗みじん切り)……1片分
・菜種油……大さじ1
・しょうゆ、酢……各大さじ1

【作り方】

(1)きゅうりは皮の両面に斜め 3mm幅の切り目を入れて、2cm長さに切り、保存容器に入れる。

(2)小鍋ににんにくと油を入れて弱めの中火で熱し、焦げない程度に火を通し、香りを移す。しょうゆ、酢と合わせる。

(3)(1)に(2)を加え、30分以上置く。

*保存の目安:冷蔵で5日ほど

なすの漬け物2種

 さっぱりしていて箸休めにもぴったり

なすの甘酢漬け

材料(作りやすい分量)
・なす……3本(250g)
・塩……5g(なすの重量の2%)
 A〔酢……大さじ2、みりん……大さじ1、砂糖……小さじ1〕

【作り方】

(1)なすはヘタを切り落として縦半分に切り、5mm幅の斜め切りにする。

(2)保存容器に(1)を入れて塩をまぶし、300g程度の重しをして30分ほど置く。

(3)水けを絞ってボウルに入れ、Aを加えて15分以上漬ける。

*保存の目安:冷蔵で5日ほど

なすの塩漬け

材料(作りやすい分量)
・なす……3本(250g)
・塩……5g(なすの重量の2%)

【作り方】

(1)なすはヘタを切り落として縦 4つ割りにし、長さを3等分に切る。

(2)保存容器に(1)を入れて塩をまぶし、300g程度の重しをして1時間ほど置く。

*保存の目安:冷蔵で3日ほど。食べる分だけ取り出し、水けを絞って器に盛る

教えてくれたのは……横山タカ子さん●料理研究家。長野県出身、在住。信州の食の豊かさに着目し、気候を生かした伝統食品や郷土料理を研究。健康長寿の知恵があることを知り、家庭料理としてアレンジしたレシピを広く紹介。新刊『横山タカ子の汁飯香』が好評発売中。

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