ステージ2の乳がん罹患の麻倉未稀さん、乳房再建した歌手ならではの“理由”とがん発見の“経緯”
週刊女性PRIME / 2024年12月19日 11時0分
2017年、テレビ番組の企画で受けた人間ドックがきっかけで乳がんが見つかったのは歌手の麻倉未稀さんだ。
テレビ番組の企画で乳がんがみつかる
左乳房部にステージ2の乳がんが見つかり、全摘出。同時に乳房再建手術を受け、現在はホルモン治療で経過観察をしている。
「私は乳がんが見つかる17年前に乳血栓と診断され、経過観察のため毎年病院に通っていたんです。でも夫や父の病気があったためしばらく検診を怠っていました。そんな矢先にテレビ番組からオファーがあり、人間ドックを受けることにしたのは、少し前から胸に違和感があったから。そして乳がんが見つかりました」
左胸を全摘することに迷いはなかったが、歌を続けるために乳房再建手術を希望した。
「歌うときにはバランスが必要で、片方の乳房がないと影響が出てしまいます。ホルモン療法は10年続ける必要がありますが、副作用なのか声のかすれを感じ、ボイストレーナーの先生に喉を鍛えるアドバイスをいただいています。
ほかにも腕が上がりづらい、肩甲骨が固まりやすいといった身体への影響はあり、マッサージを受けるなど術後はこまめなメンテナンスを行っています」
乳がんの体験者として語る機会が増えたが、地元の神奈川県藤沢市をはじめ、乳がん検診受診率の低さが気になった。乳がんの罹患率は増加傾向にあり、検診の重要さをもっと訴えたいと考えた麻倉さん。
そこで手術の翌年の'18年、元プリンセスプリンセスのドラマー・富田京子さんと「ピンクリボンふじさわ」をつくり、歌と講演がセットの催しをしたのが啓発活動の始まりだ。
「乳がんの冊子を渡されても、がんは怖いですし、見ない人も多いですよね。でも音楽を通して啓発をしていけば、少しは怖さがやわらいで、検診を受けてくださる方も増えるのではと思いました」
一方、乳がん検診のマンモグラフィーは乳房を挟んで検査するため、痛みがつらいと検査から遠のく人もいる。
「昔に比べて検査の痛みは軽減されてきていますが、痛みには個人差がありますよね。ちょっと胸がおかしいと気づいたときにはがんが進行していることもあるので、普段から自分の胸を観察し、おかしいなと思ったらすぐにクリニックに行ってほしいと思います」
麻倉さんは乳がんになったときに、ネットで検索をしても情報が少ないことに驚いた。7年前に比べると今は情報が得やすくなっているが、不安を軽減するためにも、病院以外でがんについて話せる場所が必要とされている。
治療を続けるためにも生活の保障があることは大切
「私は手術の前後で、がん患者や家族を受け入れる『マギーズ東京』で話を聞いてもらって心が落ち着きました。地元の藤沢にもそんな場所をつくりたいと思ったのです」
そこで'20年に発足したのがNPO法人「あいおぷらす」だ。乳がんに限らず、がん患者や家族が集える機会をつくり、さまざまな活動を行っている。
「ピアサポーター、がん専門看護師、ケア専門看護師といったスペシャリストと話ができる場ですが、活動資金は寄付で賄っています。活動を継続していくためにも寄付してくださる企業さんにお願いをしているところです」
術後3週間でステージに復帰し、その後も精力的に音楽活動を続けてきた麻倉さん。今は抗がん剤や放射線治療をしながら仕事を続ける人も多い。
「治療がつらくて会社を辞めたいと思う人もいますが、治療を続けるためにも生活の保障があることは大切です。働くがん患者をサポートする企業側の体制が整っていくことを願っています」
取材・文/紀和 静
あさくら・みき 1960年生まれ、大阪府出身。'81年、CMソング『ミスティ・トワイライト』でデビュー。'80年代の大ヒットテレビドラマ『スクール・ウォーズ』『スチュワーデス物語』の主題歌『HERO』『What a feeling~FLASH DANCE』で強烈な印象を残す。ポップスにとどまらずJAZZ、ゴスペル、ラテン、クラシックに至るまで幅広く歌いこなし、ミュージカルや旅番組ではリポーターとしても活躍。2018年に地元の藤沢で「ピンクリボンふじさわ」を立ち上げ、乳がん検診の啓発活動も行っている。
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