「年末年始は要注意」シニアを狙った“悪質詐欺”が増加、“駆け込みふるさと納税”もターゲットに
週刊女性PRIME / 2024年12月28日 18時0分
警察庁のデータによると、2022年の特殊詐欺の認知件数は、約1万9000件で、被害総額は約370億円。月別で見ると、12月が1900件超えと、年間を通して最も件数が多い結果に。
孫のお年玉にと下ろした金が標的に
「12月はお金の出入りが増える時期です。銀行が休業になる前に現金を引き出して、孫のお年玉や公的機関への支払い、年末年始の買い物に充てる高齢者の方は多い。その引き出した現金を狙うため、詐欺が横行しやすいのです」
と解説するのは、詐欺や悪徳商法の手口に詳しい、ジャーナリストの多田文明さん。
「慌ただしい時期を狙って、稼ぎ時である12月に高いノルマを設定して、それを果たすために必死に電話をかけてくるのです。ターゲットになりやすいのは、だましやすく預金額も多い読者の親世代。
特に、家に1人きりでいる高齢者は、すぐに相談できる人もおらず詐欺の電話に慌てて従ってしまうので、固定電話はどうしても狙われてしまうのです」(多田さん、以下同)
昨年は、年代別で見ると70代以降の被害者が最も多い結果に。また、よく耳にする『特殊詐欺』だが、普通の詐欺とは何が違うのか。
「特殊詐欺とは犯罪グループによって行われる組織型の詐欺。計画的に効率よく、お金をだまし取ろうとするため、発生件数や被害額が桁違いに多く、個人の詐欺とは比べ物になりません。
特殊詐欺では、役割分担が決まっているため、末端の実行役は捕まる存在として雇われて犯罪に手を染める。いわゆる“闇バイト”として募集され、ここ数年で増加しています」
『荷物を運ぶだけで〇万円支払う』『お金を引き出して指定の口座に振り込むだけ』など、詐欺グループの『受け子』や『出し子』の仕事をさせられるわけだが、なかには犯罪の片棒を担いでいるとは気づかないまま加害者になってしまう人もいるのだ。
「注意してほしいのは、中高年や高齢者でも闇バイトの求人だと気づかず、犯罪に加担する事例が出てきているということ。年金生活で苦しい高齢者が、お小遣い稼ぎに……と、危ない求人募集をネットで見て応募してしまう危険が。
高齢の親世代には、だまされてしまうリスクだけではなく、犯罪者側になってしまう場合もあると、この年末は伝えてあげてください」
還付金詐欺が増加、偽サイトにも注意
具体的にはどのような特殊詐欺があるのか。対策も含めて教えてもらった。
「年末に増えるのは還付金詐欺です。『12月末までに対応しないと還付金が戻らない』など、区切りをつけて揺さぶりやすいのが理由の一つ。
役所の人間だと偽って、税金や保険料の払い戻し手続きをするからとATMに行かせ、ウソの操作を伝え、お金を振り込ませます。スマホだけでお金の送金ができる、インターネットバンキングを利用した還付金詐欺も増えています」
国民生活センターに寄せられた還付金詐欺の相談は、約95%が60歳以上。親には「役所から還付金の電話がかかってきたらそれは詐欺」と、改めてしっかり伝えよう。
「最近増えているのは、SNS型投資詐欺。有名人を利用した、なりすましアカウントや偽の投資広告を利用した詐欺です。
今年の11月には、70代の女性がこの手口により約8億円をだまし取られた事件が話題になりました。インスタグラムの偽広告から、経済アナリスト・森永卓郎氏になりすましたLINEアカウントと友だち登録をするように誘導されたのです」
偽の森永氏とその仲間からのメッセージで、月85%の利益が出る金融取引を持ちかけられ、女性は最終的に8億円をも支払ってしまった。
森永氏本人はそもそも「SNSを一切やっていない」と公言していたが、高齢の親世代では、そのような情報収集は難しい。有名人の偽アカウントは簡単に作れると、親世代には伝えたい。
最近増加しているもうひとつの手口は、「警察官をかたる」詐欺。
「息子や娘を名乗るオレオレ詐欺だけでなく、最近は警察を名乗って資産状況や個人情報を引き出し、指定の口座に振り込ませたりする事例が増えています。LINEのアカウントを聞き出すなどして、ビデオ通話で警察手帳を見せてくるので信じてしまい貯金額などを教えてしまうのです。
ほかにも、総務省をかたり、『現在通話している電話は2時間後に通話不能となるので、急いで電話料金を支払え』と音声ガイダンスが流れる詐欺電話も」
ガイダンスに従ってオペレーターにつないでしまうと、前述した警察をかたる手口でお金を取られ、最悪の場合、強盗の標的にされることも。
「高齢者世代は、警察や役所を名乗られると従ってしまう傾向にあるので、それを利用してきます。親に、最近はこういった手口があると伝えるだけでも防止策になります」
年末に横行する詐欺として知っておきたいのは『ふるさと納税』を利用した手口。ふるさと納税の締め切りは12月31日のため、駆け込みで利用する人が狙われる。
「偽サイトの見分け方ですが、ふるさと納税はセールや値引きなどがありません。しかし偽サイトにはそういう謳い文句があることが多く、商品の販売価格が極端に安いと偽物の可能性大です。
クレジットカードの情報を登録してしまい不正に利用されたり、寄付金として支払ったつもりが、お金も取られ返礼品はもちろん来ない……という、悲惨な結果になりかねない」
親を守るためには冷静な声かけを
「主な詐欺被害と対策について紹介しましたが、共通していえる対策としては、『電話で絶対に個人情報を教えない』『怪しいURLは安易にクリックせず、一度誰かに相談する』を徹底してと伝えること。
とはいえ、子が確認してあげるのにも限界があるので、普段から使っているショッピングサイトなどは、ブックマークする習慣をつけて、そこからアクセスするように教えてあげてください。帰省した際に、親御さんのスマートフォンやパソコンにお子さんやお孫さんが、ブックマーク設定をしてあげるのが簡単かと思います」
また、親が詐欺に遭っているかもしれないと思ったら、冷静な声かけが大事だ。
「頭ごなしに否定して、『なんでそんな電話を真に受けるの』と怒ってしまうと、今後親御さんがあなたに相談するハードルが上がってしまいます。冷静に『お母さんと似たような状況で詐欺だったケースがあるんだよ』と丁寧に説明したうえで、警察に通報してください」
また、不安なときには警察相談ダイヤル「#9110」にかけてほしいと伝えるのも手だ。身内の言葉は素直に聞かなくても、警察から『それは詐欺ですよ』と言われれば、納得する人も多いのだという。
年末年始に増える詐欺はコレ
・還付金詐欺
税務署、年金事務所の職員などと名乗り、医療費や保険料の過払い金や、一部未払いの年金があると自宅に電話をかけ「ATMで手続きができる」とお金を振り込ませる。公的機関が還付金のことで電話をすることはないと改めて親に伝えよう。
・警察をかたる詐欺
電話で「逮捕状が出ている。あなたの口座のお金を調べる必要がある」などと、警察官を名乗って個人情報を聞き出し、指定の口座に振り込ませようとする事件が多発している。電話はすぐに切って、相手が名乗った警察署の名前や氏名を、近くの交番などに伝えて。
・SNS型投資詐欺
インターネット上に著名人の名前や写真を悪用した偽の投資広告を出し、「必ずもうかる方法を教える」とSNSに誘導。最終的に「投資金」「手数料」という名目で、銀行口座に金銭を振り込ませる。金銭のやりとりをする前に、なりすましかどうかを確認する。
・副業詐欺
親世代だけでなく中高年の主婦層も狙われている詐欺。「自宅で簡単にできる副業」とDMや広告で募集があり、相手の指示どおりに仕事をすると数百円の収入が入る。「もっと稼げる仕事をしないか」と紹介されて行うと、操作に失敗したなどと言われ、違約金などを請求されるという被害に遭う。
親が偽サイトにアクセスするリスクを減らすために、よく利用するサイトをスマホの「ブックマーク機能」を使って登録するのも対策になる。警察庁が発信する、最新の詐欺手口を教えてくれるサイトも一緒に登録しておくと安心。
【SOS47・特殊詐欺対策ページ】https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/
教えてくれたのは……多田文明さん●詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト。ルポライターとしても活躍。キャッチセールスの勧誘先など、これまで100か所以上を潜入取材。著書に『信じる者は、ダマされる。』(清談社Publico)ほか。テレビやラジオ、講演会などへの出演も多数。
取材・文/ガンガーラ田津美
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