「パリのホームパーティーで息子さんと」中山美穂さん、岩井俊二監督らが語る“女優魂とすっぴん顔”
週刊女性PRIME / 2024年12月24日 16時0分
中山美穂さんの悲報がもたらした衝撃と悲しみの波紋は今も消えていない。
「改めて中山さんの残した作品の素晴らしさを実感している人も多いでしょう。日本レコード大賞は『特別功労賞』を贈ることを発表しました。レコ大では、1985年の第27回で最優秀新人賞を受賞。1986年の第28回『ツイてるねノッてるね』、1988年の第30回『You're My Only Shinin' Star』でレコード大賞金賞を受賞していますからね」(レコード会社関係者)
2025年1月に始まるドラマで、すでに撮影を終えていたシーンが放送されることも決まった。
「フジテレビ系で放送される、香取慎吾さん主演の『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』の初回と第3回で、保育園の園長役を演じています。さらに、テレビ朝日系で放送される『家政夫のミタゾノ』では第1話のメインゲストで登場するそうです」(テレビ誌ライター)
岩井俊二監督が語る「素顔」
中山さんが女優として大きな飛躍を遂げた、1995年公開の映画『Love Letter』で監督を務めた岩井俊二氏が当時を振り返る。
「お願いしようとしていたのが一人二役で、1人は明るい役なんですけど、もう1人は悲しみに暮れている役。暗めのほうの役ができるんだろうかと、心配していたんです。というのも、当時の彼女は活発な役をよく演じており、暗めの役の印象がなくて。実際にお会いしてみると、清楚で物静かで、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐタイプ。暗い役のイメージにぴったりだったので意外でしたね」
恋人に先立たれた“渡辺博子”が天国に手紙を出すと、恋人と同姓同名の女性“藤井樹”から返事が届く。中山さんは2人の女性を演じ分ける難しさを感じていた。
「“博子って、ここ、どう演じていいか、ちょっとわからなくて”って言うんです。“明るい樹は、すごく自分と近いのでわかるけど、博子は自分とは遠い感じがしてわかりにくい”って。僕からすると“いや、素は樹じゃなくて、博子だよね”と思っていたから噛み合わないんです、話が(笑)」(岩井氏、以下同)
演じていくうちに、中山さんは役をつかんでいった。
「最初は“映画はちょっと苦手で”と言っていたんです。でも、撮り終わった後にはうまくやれた実感があったんでしょうね。今度は逆に“映画しかやりたくない”と言い出して(笑)、事務所を困らせてしまったみたいなんですよ。彼女はいい意味でゴーイングマイウェイなんです」
デビュー40周年に「一緒に仕事を」
また一緒に映画を作りたいと話していたが、ようやく実現したのは2012年の『新しい靴を買わなくちゃ』。脚本と監督は北川悦吏子氏で、岩井氏はプロデューサーを務めた。当時、2002年に結婚した辻仁成と、2004年に出産した息子とパリで暮らしていた。
「全編フランスで撮影しました。中山さんがパリでホームパーティーを開いてくれたのが印象に残っています。アットホームな雰囲気で、辻さんと息子さんにも会いましたよ」
2020年の映画『ラストレター』では中山さんはゲスト出演で、ロケは数日ほどだった。
「“終わりたくない”って言われて“今度は長編映画の企画を持っていくね”と話していたんです。でも、また何年も過ぎてしまい、後悔がありますね。『Love Letter』が来年30周年なんです。彼女も来年デビュー40周年のメモリアルイヤーとなるはずでした。1月か2月あたりに小樽に行って一緒に仕事できないかって話していたんですが……」
中山さんの歌手デビュー曲『C』のディレクターだった元キングレコードの福住朗氏も、やはり初対面で寡黙な人と感じたと話す。
「当時は売り込みが多くて、みんなよくしゃべる。その中で彼女はあんまり質問には答えずに頷いたりとか、そういう感じだったんです。この人はオーディションで落とされるだろうなって思いましたよ。だってしゃべんないんだもん(笑)。でも雰囲気はすごくあるんですよ。目力が強くて、オーラがほかの人と違うんですよね」
「うちには明菜がいるから」
中山さんが所属していた芸能事務所『ビッグアップル』の創業者・山中則男氏は、中山さんをどう売り出すか悩んでいた。そんなとき、ワーナー・パイオニア(現ワーナーミュージック・ジャパン)の故・寺林晁さんに相談した。
「寺林さんは、中森明菜さんの制作宣伝を統括した“育ての親”だったので、デビュー前に相談したんです。寺林さんは“うちには明菜がいるから、うちじゃないほうがいい。明菜の二番煎じでは絶対に売れない”と話していました」(山中氏)
オーディションには軒並み落選したものの、デビュー曲の『C』は大ヒットして、中山さんは歌手としても人気が爆発。超多忙な生活に。
「ドラマやって、取材やって、夜レコーディングやって、そういう感じの日が続いていたから。殺人的なスケジュール。ずっと走り続けている感じですよ。とにかく駆け抜けたって感じかな。すごい精神力がないと難しいですよね」(前出・福住氏、以下同)
福住氏はレコード会社を退社後に岡山に移住。2024年4月、中山さんが広島でライブを開催した際に会いに行った。
「ステージでは、昔のようにダンサーと一緒に振り付けを踊っていたんです。よく平気だなと思いました。デビュー当時はできるけど、年齢を重ねるときついだろうなと。中山さんはずっと挑戦する人。マラソンのように、ずっと走り続けていたんですよ」
別れ際に「じゃあ東京でね」
ライブ後に楽屋を訪問。
「コロナ禍でずっと楽屋に入れなかったから、直接会うのは久しぶりでした。そうしたら声を上げて喜んでくれて。“よく頑張ってるね”って声をかけたら、彼女は“でしょ”って感じで。
私の体調のことも気遣ってくれて“食べすぎてない?”とか、親子のような会話をして。またみんなと一緒にごはんを食べたり、お酒を飲んだりしようかっていう話をしてから、じゃあ東京でねって別れたんです」
誰もが、まだ中山さんが旅立ってしまったことを受け入れられないでいる。前出の岩井氏は、訃報を聞いて映画のシーンを思い出していた。
「『Love Letter』は中山さんが息を止めて、ずっと目を瞑っているシーンから始まるんです。そこで苦しくなって、ハッと息を吐く。訃報を聞いたときも、映画みたいにハッと呼吸を続けてほしい、何かの冗談だろうって思いました……」
スクリーンでは、中山さんは今も微笑みを浮かべて私たちを見つめている─。
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