通算8万台突破! ベントレー「コンチネンタルGT」が世界のセレブに愛される理由とは
くるまのニュース / 2021年2月6日 19時10分
2021年1月26日、英国チェシャー州クルーにあるベントレー本社から、通算8万台目となるコンチネンタルGTが、クルー本社工場からラインオフしたことを祝賀するプレスリリースが全世界に配信された。そこで、3世代にわたるコンチネンタルGTの系譜を振り返ってみよう。
■ベントレーの新章はこうして始まった
今世紀初頭の発売以降、ラグジュアリー・グランドツアラーのベンチマークとなってきた「コンチネンタルGT」は、これまで平均して年間約5000台のペースで世界中に届けられてきた。
●ロールス・ロイスと離れることから新たな神話は始まった
1998年、長年のパートナーであったロールス・ロイスとたもとを分かち、67年ぶりに独立したメーカーとなったベントレー・モーターズは、その直後から「MSB(Mid-Size Bentley)」のコードネームとともに、画期的な新型車を秘密裏に開発していたという。
このプロジェクトが結実したモデルが、のちにベントレー史上最高のヒット作となるコンチネンタルGTである。
2002年のパリ・サロンにて、まずはコンセプトカーとしてショーデビュー。そして、実に73年ぶりとなったル・マン24時間レース制覇を果たしたのと同じ2003年のジュネーヴ・ショーにおいて、量産モデルがワールドプレミアに至った。
そして2010年秋には、2011年モデルとして2代目に進化。さらに2017年には現行となる3代目がデビューし、リーマンショックや新型コロナウイルス禍などの世界的な逆境もしのぎつつ、順調にヒットを重ねてきたのだ。
●ベントレーに大躍進をもたらしたメガヒット作
筆者の記憶が確かならば、コンチネンタルGT誕生以前のベントレーの単一モデルで過去最高の生産台数を記録したのは、1946年から1952年まで生産された「マークVI」サルーン、およびそのマイナーチェンジ版として1952年から55年に生産された「Rタイプ」サルーンだったはずである。それぞれの生産台数は5052台と2320台で、両方合わせたとしてもコンチネンタルGTの10分の1にさえ遥かに及ばない。
この数字だけを見ても、現在のベントレーにとって、コンチネンタルGTがいかにアイコニックな存在であるかがお分かりいただけるだろう。
歴代の3世代、18年間でコンチネンタルGTのスタイリングやテクノロジー、エンジニアリングはすべてドラスティックな進化を遂げ、W12ツインターボエンジンの最高出力は27%もアップ。その傍らで、現行の3代目ではオリジナルに比べCO2排出量を48%削減することができたという。
2020年11月に公表しているように、ベントレーでは2026年までに全ラインナップをプラグインハイブリッドとバッテリー電気自動車(BEV)に切り替え、2030年までにBEVのみをラインナップする計画を推進しているとのこと。したがって、次期コンチネンタルGTも電動化が図られると見て間違いないが、このクルマが築いてきた哲学は、これから先も変わることはないだろう。
■セレブに愛される、全天候型超高速グランドツアラーとは
2003年に登場した初代コンチネンタルGTは、それまでのベントレーの常識をことごとく破る「マイルストーン」というべき存在だった。
●本格スーパーカーへの仲間入り
「Rタイプ・コンチネンタル」の系譜を受け継ぐ、歴代「コンチネンタルGT」
その販売価格はロールス・ロイス傘下時代のベントレー製クーペ「コンチネンタルR」および「コンチネンタルT」の約半分に相当する比較的安価なものであった。
しかし、560psに達するW12ツインターボエンジンを高度な4WDシステムと組み合わせたことで得られた300km/h超級の最高速度に代表されるパフォーマンス、4WDによる異次元的ロードホールディングとスタビリティなど、それまでのベントレーとは一線を画したモデルとなっていた。
どちらかといえば、クラフトマンシップによる豪華なエクステリア/インテリアが最大の売り物だった時代のベントレーには望むべくもなかった、本格派スーパーカーとしての実力を手に入れていたのだ。
また、カタログなどメーカー発行のオフィシャルドキュメントにもそのシルエットが大きく描かれているのでご存知の人も多いかもしれないが、歴代のコンチネンタルGTには精神的なモチーフになった偉大な祖先がある。
それは、往年のベントレーが1952年から3年のみ製作した伝説のスポーツクーペ、コンチネンタルGTが登場するまではベントレーの最高傑作ともいわれていた「Rタイプ・コンチネンタル」である。
初代コンチネンタルGTのデザインを手がけたベントレーのデザインチームは、なだらかなスロープを描くファストバックのテールラインやマッシブなフロントフェンダー、キックアップしたリアフェンダーなど、かつてRタイプ・コンチネンタルを特徴づけていたボディラインを巧みに引用、みごと21世紀のクーペとして結実させた。
もちろん、これらの輝くような魅力を世界の裕福なエンスージャストたちが放っておくはずもなく、最初の1台が正式デリバリーされる8か月も前の段階で3000台以上の予約オーダーが殺到するなど、デビュー当初から全世界で大きな成功を得るに至ったのだ。
●歴代のコンチネンタルGTに共通するキャラクターとは?
2011年に代替わりした2代目では、シャシのアーキテクチャーを初代から踏襲しつつも、「スーパーフォーミング工法」でより自由なデザインがおこなえるようになったアルミ製ボディパネルを採用するなど、初代以来のキャラクターを強力にアピール。
また、この代で初めて選択可能となったV8ツインターボエンジン搭載モデルが、さらなるヒットを生み出すことになった。
そして2017年にデビューした3代目では、新たなアーキテクチャーの採用により、走行性能とスタイリングの双方でジャンプアップ。FR基調の4WDとなったことで、さらに洗練されたハンドリングを披露するようになる。
さらに、昔ながらのベントレーの伝統である職人技のコーチワークも、ビスポーク部門「マリナー」とのコラボでさらなる高みに到達している。
3世代すべてのコンチネンタルGTに一貫していたのは、ベントレーがRタイプ・コンチネンタル以来、長らく身上としてきた「モダンでラグジュアリーなグランドツアラー」というキャラクターであろう。
加えて、初代から大出力のエンジンに4WDシステムを組み合わせることによって、自らが世界のパイオニアとして「全天候型の超高速グランドツアラー」ともいうべき新たなカテゴリーを確立したことも見逃せない。現代ベントレーの快進撃を決定づける名作と評されるのも無理はない。
* * *
そしてデビューから18年後となった現在、初代の1台目の製作にも関わっていたという多くの熟練したアルチザン(職人)たちの手によって、ついに8万台目となるコンチネンタルGTが製作されることになった。
ちなみに、今やカーボンニュートラルとなったクルー本社ファクトリーにおいて、オーダーメイドで作られた記念すべき8万台目のコンチネンタルGTは、右ハンドルの「コンチネンタルGT V8」であった。華やかな「オレンジフレーム」のボディカラーに、グリルやモール類をダークティント仕上げとした、いかにもコンテンポラリーな雰囲気のクーペである。
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