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不人気フェラーリでもMTだと値段は高いのか? 相場より3倍5倍になるMT仕様跳ね馬とは

くるまのニュース / 2021年8月31日 8時10分

ユーズドカー市場で比較的安価なプライスとなっているV12 FRモデルのフェラーリ。しかし、MT仕様だとまったく話が違うようです。最新オークションで落札された2台のMT仕様跳ね馬の驚きのハンマープライスを紹介します。

■マニュアル仕様だと高額になることを証明した跳ね馬2選

 前世紀末、「355」シリーズに初めて「F1マティック」が導入されて以来、フェラーリでは急速に2ペダルのATモードつきパドルシフト式シーケンシャルMTへの移行を進め、2010年代初頭になると古き良き3ペダルのマニュアル仕様車は、事実上のフェードアウトを余儀なくされてしまった。

 しかしコレクター向けのマーケットでは、生産数の割合が圧倒的に低いマニュアル仕様車が高い人気を誇っていることは、もはや世界的なトレンドとなっているようだ。

 毎年8月中旬、アメリカ・カリフォルニア州モントレー半島内の各地で展開されるカーマニアの祭典「モントレー・カー・ウィーク」が今年2年ぶりの開催となるのに際して、昨2020年はオンライン限定オークションでお茶を濁したRMサザビーズ社も、恒例の大規模オークション「Montley」をオンラインおよび対面型のミックスで開催。数多くのフェラーリが出品されることになったのだが、なかでもVAGUEが注目したのはマニュアル最終期のV12モデル2台だった。

 どうやら、これまでマニュアル仕様であることによる価格アップ分が「プラスα」であったのに対して、一部のモデルでは数倍レベルの高騰状態となっているようなのだ。

●2005 フェラーリ「スーパーアメリカ」

 2005年1月の北米デトロイト・オートショーにてワールドプレミアに供された「フェラーリ・スーパーアメリカ」は、その2年前から生産されていた当時のフェラーリV12フラッグシップ「575Mマラネッロ」のモデルライフの最後を飾るリミテッドエディションとして追加された、とても個性的なオープンモデルである。

 Cピラーを支点として、後方にクルリと180度転回することによってオープンとなる特異な回転式ルーフの発案者は、ピニンファリーナ社の元デザインディレクターで、フェラーリでは「ディーノ206/246GT」や「365GTB/4デイトナ」、「308GTB/GTS」などの名作を手掛けた伝説の名匠、レオナルド・フィオラヴァンティその人であった。

 画期的なオープントップ機構は、フランスのガラス用品メーカー「Saint-Gobain(サンゴバン)」社との共同開発による、リアウインドウまで一体化された特殊ガラスルーフ「エレクトロクロミック」、およびカーボンファイバー製フレームを組み合わせた専用ルーフによって構成される。

 この「エレクトロクロミック」ガラスは、電子制御で室内に透過する光量を5段階に調節できる優れモノ。そしてフィオラヴァンティ式ルーフのユニークな作動と合わせて、このシステムには「レヴォクロミコ(Revocromico)」というペットネームが与えられた。

 一方、スーパーアメリカの「走り」のためのメカニズムは、基本的に575Mマラネッロと共通とされている。ただし5.7リッターのV型12気筒エンジンのみは、共通の「F133」系エンジンを搭載する2+2モデル「612スカリエッティ」と同等のチューニングにアップデート。25psアップに相当する540psまでスープアップされることになった。

 世界限定559台のみが生産されたスーパーアメリカのなかでも、正規の北米スペック車両は170台ほど。さらにマニュアル車の比率は、ベース車である575Mマラネッロよりもさらに小さかったようで、ユーズドカー市場に6速MT仕様のスーパーアメリカが出回る事例は皆無に近いともいわれているようだ。

 今回の出品車両の走行距離は8800マイル(約1万4000km)とローマイレージで、コンディションも新車同然。オプションや付属品も完備し、「フェラーリ・クラシケ」も取得済みという申し分のない条件も相まって、62万5000-70万ドルという驚きのエスティメートが設定されていた。

 しかしもっと驚くべきは、実際の競売ではエスティメート上限を大きく上回る78万9000ドル、つまり邦貨換算約8600万円で落札されたことだろう。

 今回の「Montley」オークションには、多数派であるF1マティック仕様のスーパーアメリカも出品されており、そちらには22万5000-27万5000ドルという、今となってはリーズナブルにも感じられるエスティメートに対して、29万1000ドル(邦貨換算約3200万円)での落札となった。

 つまり、マニュアルであるかF1マティックであるかの違いが、約2.7倍の価格差になったということなのである。

■限定モデルでなくともMTで5倍近い価格になるフェラーリとは

 2005年の夏、「575Mマラネッロ」に代わるフェラーリV12ベルリネッタとして発表された「599(日本以外では599GTBフィオラーノ)」は、コレクターズカーとしての需要を得るのは、まだまだ先のことと思われる。

 しかし599といえば、ごく少数ながら6速MT仕様車が存在することも有名なエピソードであり、もしもその希少なマニュアル車が市場に出てくれば「話は別」のようだ。

日本における「599」のユーズド価格がおおむね1500万円前後であることを考えると、驚異的な落札価格だったMT仕様の「599」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's日本における「599」のユーズド価格がおおむね1500万円前後であることを考えると、驚異的な落札価格だったMT仕様の「599」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●2009 フェラーリ「599 GTBフィオラーノ」

 599のフロントに搭載されるエンジンは、かの「エンツォ・フェラーリ」用を起源とする「F140C」型6リッターV12で、最高出力620psを発生。0-100km/h加速3.7秒、最高速は330km/hを超える素晴らしいパフォーマンスを発揮した。

 また、トラクションコントロールを組み入れた「F1-TRAC」に「SCM」サスペンションなど、フェラーリのレゾンデートルたるF1GP参戦で培われた当時の最新電制技術もふんだんに盛り込まれ、サイズを感じさせないハンドリングを身上としていた。

 しかしこの高性能は、575Mマラネッロ時代の「F1マティック」に比べて、変速スピード・マナーともに洗練された「F1スーパーファスト」ギアボックスを前提としたもの。したがって6速MT仕様車は、フェラーリにとって重要な得意客の求めに応じて、ごく少数が製作されたに過ぎない。

 RMサザビーズ北米本社のWEBカタログによると、マニュアル仕様の599は総計30台、そのうち20台が北米に向けて作られたという。

 このほどRMサザビーズ「Montley」オークションに出品された599は、2009年モデル。フェラーリの正規ディーラーを介して、新車時にハワイ州に納車されたとのことである。そののち12年の時を経てきたものの、現状での走行距離はわずか4730マイル(約7570km)。しかも2019年には大規模なメンテナンスや若干のお色直しも施されるなど、大切に保有されてきた個体とのことであった。

 今年2月、同じくRMサザビーズ社が開催した「OPENROAD」オークションでは、今回の出品車と同様2011年モデルとなる599GTBフィオラーノ「F1スーパーファスト」仕様に15万-17万5000ドルのエスティメートが設定されていたが、流札に終わっている。また、日本国内における599のFor Sale情報を見ても、おおむね1500万円前後に収まっている事例が多いようだ。

 そのかたわら、今回の「Montley」オークション出品に際して、RMサザビーズと現オーナーは55万-60万ドルという、少々強気にも感じられるエスティメートを設定していたのだが、「強気」と思っていたのは筆者だけだったようだ。

 実際の競売では、エスティメート上限をはるかに上回る70万9000ドル、邦貨換算約7750万円という、驚異的な落札価格を計上することになったのだ。

 かつての「355F1」や「360モデナF1」など、F1マティック創成期に併売されたマニュアル仕様のフェラーリがユーズドカー市場で高価なのは、マニュアルならではの本質的なドライビングプレジャーに加えて、信頼性でもマニュアルに軍配が上がることも理由のひとつであったようだ。

 翻って、以前、筆者がインタビューした東京都内のフェラーリ専門ユーズドカーショップによると、599以降の6速F1スーパーファストは心配されがちなクラッチのトラブルや摩耗も少なく、非常に信頼性が高くなったとのこと。

 つまり、599の6速MT仕様車が現在のマーケットでこれだけの高評価を受けるのは、信頼性についてのアドバンテージやストイックな魅力もさることながら、やはり圧倒的な希少価値が反映したものと思われる。

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