バンパーのヘコみはどこまで修復可能?「コンパウンド」や「タッチアップ」DIYでクルマの小傷を直すコツとは
くるまのニュース / 2022年10月23日 14時10分
クルマをぶつけてしまったとき、板金よりも手軽な「デントリペア」で修復することが増えています。どの程度の損傷ならデントリペアで修復可能なのでしょうか。
■デントリペア可能な傷の境界線は?
クルマを運転中に死角にあるポールや障害物を見落としてしまい、ボディやバンパーをぶつけてしまうことがあります。
ある程度の速度で走っているときにどこかをぶつけてしまうということは実はあまり多くなく、むしろ、ごく低速の駐車場の出し入れや狭い位置でのすれ違いなどでちょっとした接触を起こしてしまうことが多いようです。
そんな接触事故でも、ちょっとしたへこみであれば「デントリペア」で修復できる可能性があります。
デントリペアとは、クルマにできてしまったへこみを、専用工具を使って内側から修復する方法です。では、どの程度のへこみならばデントリペアで修復可能なのでしょうか。千葉県の整備工場に勤務するI整備士に聞いてみました。
「小さなへこみや比較的大きなへこみでも、塗装面にひび割れなどがない場合はデントリペアで修復できるケースもあります。
ただし、へこんだ箇所の裏側にツールをうまく入れられるスペースがある場合に限定されてしまうのですが、それでも塗装し直す必要がないため、費用的にも安価で短時間で仕上げることが可能です」
デントリペアは、先端部分が曲線になっていたり、丸くなっていたりするなど特殊な形状の「デントツール」を使い、へこみを上手に内側から押し出して目立たなくする修復方法ですが、修復の可否は表面の塗装状況が分かれ目になるのだとか。
「塗装面にヒビが入っているかいないかが、デントリペアできるかの境界線になります。
塗装面が生きていれば(ひび割れなどがない状態なら)内側から整形できる可能性が高まりますし、修理費を抑えることができます。
またヒビが入って再塗装する場合でも、デントリペアのテクニックを併用することもあります」(I整備士)
このデントリペアはプロの道具とテクニックが必要になりますが、もう少し軽い傷なら一般ドライバーでも修復は可能です。
狭い道や駐車場などでバンパーの四隅やボディサイドなどを擦ってしまい、塗装面に擦り傷が入ってしまったり、下地が出るほどではないけれど塗装面を削ってしまったりすることがよくあります。
そんなときにまずおこなうのが、損傷部分を最小限に、かつきれいにするための傷消し作業。そこで使うのが、研磨剤が入った「コンパウンド」です。
商品は「粗め・細め・仕上げ」の3種で「傷消しセット」と表記され、ホームセンターなどでも販売されていますが、いきなり作業するのではなく、まずは損傷部分周辺をきれいにすることが大切だとI整備士はいいます。
「転んで擦り傷などができてしまったときにまず傷口をよく洗うのと同じで、クルマの擦り傷も、損傷部分周辺を洗浄して傷の具合を把握することが大切です。
ボディ表面にはコーティング剤など油膜が張っているので、洗浄後にパーツクリーナーなどで脱脂して、丁寧に修復するための下地造りをおこなってください」(I整備士)
これが完了したらコンパウンドの登場ですが、我々のような一般ドライバーがやってしまいがちなミスがあるのだとか。
「ホームセンターなどで買ってきたコンパウンドには2~3本セットになっているものが多いのですが、いきなり粗い(小さい)番手のコンパウンドを使用するのはNGです。
必要のない部分の塗装まで削って余計に傷口を広げてしまい、もとの損傷分よりも大きい範囲で傷を余計に作ってしまう一因になっています。
損傷の深さ(塗装面を削った深さ)に合わせるためにも、まずは一番細かい目のもの(大きい番手)から使ってみてください。
細かいコンパウンドで傷が消えない場合、次の番手のものを使い、それでも傷が隠せない場合に一番粗めのコンパウンドを使用します。
ここで深い傷のレベルまで削ることができたら、今度は逆の番手で少しずつ仕上げていくのが正解です。無駄に粗いコンパウンドは使用しないほうが、仕上がりがきれいになります」(I整備士)
ここでもいくら傷が深いからといって、塗装面を削りすぎないように注意が必要なのだそうです。傷の時点で下地が見えているような状態は、手軽に部分塗装ができるタッチアップで補修していくことになります。
■タッチアップは付属のブラシで塗っちゃダメ!?
手軽に買える補修剤としてポピュラーなのが「タッチアップ」です。手にしたことがある人も多いと思いますが、仕上がりが「いかにも補修しました」という状態になってしまったという人もいるでしょう。なぜそうなってしまうのでしょうか。
タッチアップのブラシは余計な部分まで塗ってしまってキレイに仕上がらない
「タッチアップで補修した箇所が目立つのは3つの理由が考えられます。
ひとつは、コンパウンドまでの下処理(コンパウンドなどでできるだけ傷を目立たなくする)が十分でないこと。
もうひとつは、タッチアップのフタに付いているブラシで作業することで、傷より広い範囲を塗装してしまっていること。
そして塗料が乾き、薄くなっているのに重ね塗りして高さを揃えていないことも要因のひとつでしょう」(I整備士)
いざタッチアップで損傷部分を塗装してみるとうまくいかないものです。フタに付随するブラシでは必要以上の部分に塗料が付いてしまいますが、I整備士はどのようにしているのでしょうか。
「私の場合は、廃材のなかから金属製の棒状のものを加工して先端が適度に細くなった工具を作りました。
傷を埋めるためには、傷の大きさに合わせてタッチアップの塗料を流し込むイメージで塗っていきます。
コンパウンドを使った下処理によって傷は最小限になっているので、最低限の塗料で穴埋めする感じです。
さらに塗料は乾くと薄くなります。多くの方がDIYで補修される場合1回しか塗らないケースが多いので、乾くとどうしても傷の深さが露呈してしまうんです。
数回塗り重ねることで、傷の深さまで塗料を盛って、最終的にコンパウンドで表面を均一に仕上げることで傷を目立たなくすることができます」(I整備士)
一度のタッチアップでうまく傷隠しできると思い込みがちですが、本来は何度か塗り重ねて厚みを出し、十分乾燥させてから小パウンドで整形するのが正しい使い方なのだそうです。補修には根気も必要です。
※ ※ ※
デントリペアは専用ツールと熟練のテクニックとがないとできないのでプロにお任せするしかありませんが、浅い傷はコンパウンドやタッチアップ塗装などDIYで直せるものもあるので、一度トライしてみても良いかもしれません。
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