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なぜデザイン激変!? トヨタ新型「クラウン/プリウス」全面刷新で一気に路線変更した意外な理由とは

くるまのニュース / 2023年1月30日 10時10分

トヨタを代表するモデルである「クラウン」と「プリウス」は、フルモデルチェンジを機にコンセプトや外観のデザインを大きく変更しました。一体どのような理由があったのでしょうか。

■セダン低迷のなかクラウンを継続させる手段とは?

 フルモデルチェンジにはふたつのパターンがあります。ひとつは従来路線を踏襲する「キープコンセプト」、もうひとつは車両の性格まで変える「コンセプトチェンジ」です。
 
 クルマが急速に進化した20世紀にはコンセプトチェンジも多かったですが、今は従来路線を踏襲するキープコンセプトが主流。車内の広さや加速性能などは、進化の過程を経て安定期に入り、環境性能や安全性といったクルマの中身を充実させているからです。
 
 そのためにフルモデルチェンジを実施しても、ボディの基本的なサイズやスタイルは変わりません。この流れは、最近フルモデルチェンジを実施したトヨタ「ノア/ヴォクシー」や日産「セレナ」などを見ても分かるでしょう。

 ところが2022年に登場したトヨタ新型「クラウン」と新型「プリウス」は、珍しく車両のコンセプトや外観を大幅に変更しました。そこには売れ行きの激減という、両車に共通する悩みがありました。

 クラウンの国内登録台数がもっとも多かったのは1990年で、20万8016台に達しています。1か月平均は約1万7300台でしたが、2021年はコロナ禍の影響も受けて約1800台です。およそ30年間でクラウンの売れ行きは10分の1まで下がりました。

 プリウスについては、国内登録台数がもっとも多かったのは3代目で、2010年には1か月平均で約2万6300台、東日本大震災を挟んで2012年にも約2万6500台を登録しました。それが2021年は約5000台ですから、プリウスの登録台数は最盛期の5分の1まで減っています。

 では、クラウンとプリウスが売れ行きを下げた原因を考えてみましょう。まずクラウンにおいてはセダン市場の縮小があります。

 クラウンがもっとも多く販売された1990年頃まではセダンが国内で一番の売れ筋カテゴリーでしたが、1990年代の中盤以降は、トヨタ「エスティマ」やホンダ「ステップワゴン」、セレナなどのミニバンが売れ行きを伸ばしています。

 さらに1998年10月には軽自動車の規格が今と同じ内容に変更され、16車種の新型軽自動車が各社からほぼ同時期に発売。そのために2000年以降は売れ筋カテゴリーが変わり、2022年に新車として売られたクルマは39%が軽自動車だった一方、セダン/ワゴン/クーペは7%にとどまっています。

 セダンの売れ行きが低下したことから、トヨタ「マークX」「プレミオ/アリオン」のようにクラウンを廃止する方法もありましたが、初代モデルが1955年に発売された伝統あるモデルですから、存続することになりました。

 その代わりセダン市場が縮小していることから、カテゴリーは変えなければなりません。また従来のクラウンは、国内中心の売り方で生産台数も限られており、新型は海外でも販売したいということから新型クラウンをSUVに発展させたというわけです。

 しかも1車種では売れ行きが伸びない不安もあるため、複数のボディを用意。従来型からの乗り替え需要も考えて、SUVとは駆動方式が異なる後輪駆動のセダンも開発しました。

 セダンからSUVに発展すると車両のデザインや性格が大きく変わりますが、従来型のユーザーもある程度は新型へ継承したいというわけで、新型クラウンの第1弾は後部にトランクスペースを備えたセダンとSUVを融合させたクロスオーバーにしました。新旧クラウンの架け橋になるモデルです。

 ただし販売がもっとも見込めるのは、今後登場する「クラウン エステート」でしょう。3列目シートも備わり多人数乗車も可能。このように新型クラウンは、クラウンスポーツを含め、売れ筋カテゴリーのSUVを複数そろえることで生き残りを図ります。

■ハイブリッド専用車以外のプリウスの価値とは?

 一方、プリウスが売れ行きを下げた理由は、ハイブリッドがトヨタ車の大半に行き渡ったからです。

 ハイブリッドの普及を振り返ると、3代目プリウスが大ヒットした2010年頃は、トヨタのハイブリッドはクラウン、「SAI」、「ハリアー」など一部の高価格車が中心でしたが、2011年に初代(先代)「アクア」が発売されるとコンパクトな車種も増え始め、今ではミニバンの「シエンタ」やノア/ヴォクシー、売れ筋SUVの「ヤリスクロス」や「カローラクロス」などにもハイブリッドが用意されています。

 ハイブリッドは珍しい機能ではなくなり、プリウスの「ハイブリッド専用車」という価値も薄れ、売れ行きが下がりました。

スポーティになった新型「プリウス」スポーティになった新型「プリウス」

 やはりプリウスを廃止する方法もありましたが、初代モデルは世界初の量産ハイブリッドです。クラウンと同様、伝統ある車種で認知度も高く、存続することになりました。

 プリウスは燃費が重視されるハイブリッド専用車であることと、リアゲートを寝かせた5ドアハッチバックの外観もプリウスの大切な特徴ですから、これを失うとプリウスらしさも薄れます。

 そこで新型プリウスはフロントウインドーやリアゲートを寝かせた外観を一層際立たせ、5ドアクーペ風に発展させてプリウスらしさを象徴化して磨き上げました。

 パワーユニットも、1.8リッターに加えて、パワフルな2リッターを設定して動力性能も高まり、ハイブリッドのスペシャルティカーになったのです。

 WLTCモード燃費を競えば、コンパクトで軽いヤリス ハイブリッドXの36km/Lに敵いません。その代わり低燃費以外のハイブリッドの特徴とされるモーター駆動の高い瞬発力、滑らかで静かな加速感などにも力を入れました。

 新型クラウンが生まれた背景には、トヨタに類似した車種がないことも挙げられます。クラウンクロスオーバーはセダンボディのSUVですから、同じプラットフォームを使うハリアーや「RAV4」とは性格が異なり重複しません。

 新型プリウスも同様です。今のトヨタに全高を1430mmに抑えた5ドアクーペ風の車種はありません。乗降性に不満が伴う代わりに、外観がスマートでカッコ良く見えます。

 つまり新型クラウンと新型プリウスは、トヨタのラインナップのなかで「空席」になっていた部分に収まり、従来のトヨタ車では獲得できなかった顧客を呼び込める可能性もあるため商品化されました。この2車種には共通点が多いのです。

 気になるのは両車の人気です。通常なら登録台数で判断できますが、今は半導体などの不足で新車の納期が遅れており、データからは正確な人気度が分かりません。

 そこで販売店に尋ねてみると、新型クラウンについては以下のように返答されました。

「以前のクラウンは、従来型からの乗り替えが圧倒的に多かったです。それが新型では、購入を控える傾向も見られ、従来型のお客さまはさほど多くありません。

 その代わりハリアーやRAV4など、SUVを使うお客さまが注目しています。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディなども下取りに入り、今までクラウンを含めてトヨタ車に興味を示さなかったお客さまが、関心を持っておられます」

 トヨタは2020年5月に、国内の全店が全車を扱う販売体制に移行しました。以前は、クラウンはトヨタ店だけが扱い、ハリアーや「アルファード」はトヨペット店の扱いでしたが、今はどこの販売店でも全車を購入できます。

 そのために先代クラウンでは、ハリアーやアルファードへの乗り替えが進んで登録台数を減らしましたが、新型では逆にハリアーやRAV4からクラウンへの乗り替えが生じているというのです。

 プリウスのユーザーの反応について販売店スタッフは次のようにいいます。

「新型プリウスでは、外観のカッコ良さを重視するお客さまが増えました。そのために欧州車からの乗り替えも見られ、従来とは異なるお客さまが来店されています。

 そのような新しいお客さまにはパワフルな2リッターエンジン車が人気ですが、今までのプリウスから乗り替えるお客さまは1.8リッターで十分といわれます。

 それなのに1.8リッターは、法人向けの「X」と、KINTO(定額制カーリース)専用車の「U」しかありません。価格が割安な1.8リッターエンジン車を充実させてほしいです」

 新型クラウンと新型プリウスの正確な売れ行きは、まだ分かりませんが、生き残るために新しいクルマ造りに挑んでいます。

 最近は各メーカーともに、セダンを筆頭に車種の廃止が増えていますが、生き残りを真剣に考えると新たな活路も生まれるようです。

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