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なぜ教習所の「教官」厳しかった? 昔は「罵声」も今では「ほめる教習」が増加 教習の指導方針が変化した理由は

くるまのニュース / 2023年6月14日 9時10分

近年の自動車教習所ではかつての厳しい指導に代わって、優しい指導をすることが定番になっているようです。なぜなのでしょうか。

■なぜ昔の教官は厳しかった?

 かつて自動車教習所(自動車学校)の「教官」といえば、厳しい指導が当たり前の時代もありました。
 
 しかし今では「優しい指導」に変化してきているようです。一体なぜなのでしょうか。

 自動車教習所で「教官」(指導員とも言う)といえば、一昔前は厳しい指導が当たり前でした。

 技能教習では、「そんなんじゃ止まれないよ」「後方確認できてないぞ」などキツい言い方でも愛のこもった指導を受けたり、ハンコをもらうために謙虚にしていても、なかなかハンコをもらえないという思い出がある人もいるかもしれません。

 それが最近では笑顔で優しい印象に大きく変化してきている、との噂があります。そもそも、なぜ過去の「教官」は厳しく指導することが多かったのでしょうか。

 都内の教習所に勤務経験のある元教官I氏に、自身の経験を踏まえて教習の変化について詳しく教えてもらいました。

「元教官という立場から言わせていただくと、基本的には限られた(実習)時間のなかで知識や技術を教えるのですから、理解度や習熟度が低い場合は、多少厳しいことを言うこともありました。

 ただし勘違いしないで欲しいのは、誰に対してもできるだけ同じように接し、できるだけ最短で免許を取得してほしいと思っていることです。そのなかでも、人間的に相性があり、合わない教習生の方が厳しく感じることはあったかもしれません」

 また当時ならではの時代背景もあります。当時は進学するにしても就職するにしても、普通免許を取得するのが当たり前の時代。いま以上に教習生が多く通っていた時代でもあります。そうなると、なかなか個人に合わせた指導が難しかった側面もあったのでしょう。

「本来は差があってはいけないのです。と言うのも、自動車教習所で教官になるためには、都道府県の公安委員会が実施する『指導員検査』という試験に合格する必要があります。

 これには学科や技能を指導できる『教習指導員』と、修了検定や卒業検定なども実施できる『技能検定員』の2つの資格を取得する必要があります」(元教官I氏)

 この「指導員検査」では、道路交通法、教習所関係法令、教育知識、交通規則、交通教則、安全運転の知識、自動車の構造に関する科目といった6つの筆記科目すべてに合格する必要があるのだとか。

 さらに、ここからは「指導員補佐(教官の見習い)」として経験を積み、その後晴れて「教習指導員」になれるのだそうです。

 つまり教官も教習生と同じように、試験を受けて合格したからこそ、教習生にも「もっと頑張れ!」というような気持ちになってしまうのかもしれません。

「だからこそ、技術の習熟度や操作の理解度が低い教習生には、つい厳しい言葉になってしまう部分があったのかもしれません。

 また過去には女性の社会進出が遅れていたこともあり、男性社会だったのも事実。ゆえに無意識に『上から目線』な物言いをしていた教官もいたでしょう」(元教官I氏)

■「褒める」指導への方向転換の理由は?

 かつては指導が厳しかった傾向にあったようですが、今では真逆の「優しい」指導をする教習所もあるようです。

教習の仕方が変われど路上での心構えは変わらない教習の仕方が変われど路上での心構えは変わらない

 その背景には少子高齢化、若者のクルマ離れなどもあり、新規教習生の数は年々減少していると言います。

 こうした状況で各教習所がサービスの差別化、顧客獲得を目指すために、今までの「叱る」から「褒める」指導方法へと変化したのではないかとI氏は話します。

「言葉は悪いですが、今までは多少横柄な教官でも次から次へと教習生が来てくれていたので問題になりませんでしたが、少子高齢化により教習生が減り、より良いサービスを心がけているケースが増えたと聞いています。

 また現代では企業のコンプライアンスが重視され、高圧的な態度は『パワハラ』と取られてしまう時代。これに拍車をかけるのがSNSの普及で、今までは(短期間の通学のため)教習生同士の会話はあまりありませんでしたが、相性の悪い教習生が『○○教官って嫌だよな』などとつぶやかれると、SNS上で拡散されてしまうわけです。

 さらにとある教習所では『教官人気ランキング』なども実施されていると聞きます。教習生に気に入ってもらえるように、厳しい言葉より優しく褒める指導へと変わっていったんだと思います」

 この点については自動車教習所業界だけでなく、多くの業種でも共通した変化が見られます。ましてや受講料として多額のお金を払ってくれている教習生はお客様なのですから、高圧的な命令口調では続けていけないのも納得です。

「個人的には、偉ぶるわけでもなく粛々と指導してきたつもりです。なので、ときには危ない操作は注意しましたし、気をつけなければいけないポイントなどは、つい厳しい口調だったかもしれません。

 それでも、教習生がいざ路上に出たとき役に立つアドバイスとして指導してきた人間もいるのは覚えておいて欲しいです」(元教官I氏)

 現在の教習生の多くは、いわゆるZ世代よりさらに若い世代に移りつつあります。少子化やゆとり教育の名残などもあり、叱られることに慣れていないという傾向もあります。また教習所の数も過去より増えた結果、教習所同士で顧客の取り合いもさらに激化しているのだとか。

「また、実際に褒める教習は効果も高いのだそうです。AT限定免許が主流になったおかげで以前のようにエンストする教習生も激減したのも、厳しく指導する必要がなくなった要因の1つでしょう」(元教官I氏)

 ただし、だからと言って褒めるばかりが正解でないのも事実です。クルマ社会に適応できるよう、いかに効率的かつ的確に必要な技術を指導できるかが重要なポイントです。

 最近では設備も新しく充実している教習所も増え、一部では輸入車の教習車を採用するなど、多様な面から顧客満足度を高めようという企業努力も垣間見えます。

「以前と比べたら、免許を取得するハードルはさらに下がったと思います。また今までの『指導』とは違う、『学んでいただく』という顧客ファーストのサービス業に近づいているのかもしれません」(元教官I氏)

※ ※ ※

 時代背景などからかつての厳しい教官は減っていき、優しい指導をする教官が増えており、同じ自動車教習所でも教習の雰囲気は変化しています。

 しかし、路上に出てしまえばすべてイーブンです。優しい言葉は消え、交通の流れは速く、ときには強引なドライバーに遭遇したり、クラクションを鳴らされることもあります。

 基本的な交通ルールを学ぶのも大事ですが、何より実際の交通の流れにうまく乗ることができ、いつでも譲り合いの精神を持ち続けられるよう、むしろ免許取得後のほうがスキルアップが必要なのかもしれません。

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