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近年採用がすすむ「トルクベクタリング」 SUVに多いが一体ナニモノ? 運転が上達したと“錯覚”する機能の効果って?

くるまのニュース / 2023年9月30日 20時10分

高い人気を誇るSUVですが、最近は「トルクベクタリング」機能を装備するモデルが増えました。このトルクベクタリングとはどんな機能なのでしょうか。

■トルクベクタリングって一体何?

 人気かつ定番ジャンルとなった「SUV」ですが、各メーカーがさまざまなモデルを市場投入し、豊富なラインナップから選べるようになりました。
 
 そんなSUVでは、近年「トルクベクタリング」なる機能が装備されることが増えています。メーカーによってネーミングが異なることもありますが、4WDモデル(一部では2WDにも)に搭載されているようです。
 
 何となく駆動力に関する機能なのは予想できるのですが、一体どのようなものなのでしょうか。

 トルクベクタリングとは、タイヤにかかる駆動力を電子制御でより高度にコントロールする機構のこと。これによって、挙動を安定させ、よりスムーズかつ安全にコーナリングができるといわれています。

 現在のSUVは4WDが増えましたが、もともとはFF(前輪駆動)をベースにしているため、基本的なセッティングは速度を上げると旋回半径が大きくなる(外に膨らんでいく)「弱アンダーステア」とされています。

 というのも、「アンダーステア」のほうがコントロールしやすく、コーナリング速度を落とせばアンダーステアが軽減し曲がりやすくなる(=無理な速度でなければスムーズにコーナーを走れる)という万人向けのセッティングなのです。

 ただし、実際の路面は状況が常に変化しています。グリップが良い路面もあれば、砂やホコリなどで滑りやすい路面もあり、ましてやクルマの向きを変えるコーナリングは、同じ駆動力のままでは左右のタイヤに回転差が生じることもあります。

 この回転差や空転してしまうタイヤを減らす目的で誕生したのが4WD(AWD)のほかに、左右の回転差を制御・調整する「デフ(ディファレンシャルギア)」と呼ばれる機構もあり、デフは専用ギアの組み合わせで機械式に作動させる機構です。

 そして、このデフの機能をさらに進化させたのが、トルクベクタリングです。

 今まではギアを用いた機械式が主流でしたが、近年はこれに電子制御が伴っています。

 タイヤの回転を監視するセンサーや走行時の車体の挙動を監視するセンサー、高速で情報処理をおこなうコンピュータやヨーコントロールデフなど電子的デバイスを組み合わせ、4つのタイヤを独立して電子制御してくれます。

 コーナリング中は曲がろうとする方向とは逆の方向に引っ張られる遠心力が働きますが、これを瞬時に検知し、引っ張られる側の駆動力(トルク)を高める、または内側の駆動力を抑えるなどで挙動を安定化させ、曲がりたい方向により曲がりやすくしてくれるという、安全にもスポーツ走行にも対応する制御機構というわけです。

■トルクベクタリングの効果はいつ・どこで感じられる?

 実はこのトルクベクタリングは、ここ数年に出てきた新しい技術ではありません。1996年に登場したホンダ「プレリュード」(5代目)に「ATTS(アクティブ・トルク・トランスファー・システム)」なる名称で搭載されたのがはじまりと言われています。

 ただし実際にこの機構が有名になったのは、三菱「ランサーエボリューションIV」の「アクティブ・ヨー・コントロール(AYC)」のおかげでしょう。

 それから約30年が経過し、SUV市場の拡大や4WD自体の進化、電子デバイスの高度化などが組み合わされ、現在ではさらに扱いやすく高精度な制御機構へと進化、普及しているというわけです。

トヨタ「RAV4」に世界初搭載された「ダイナミックトルクベクタリングAWD」トヨタ「RAV4」に世界初搭載された「ダイナミックトルクベクタリングAWD」

 トヨタでは「ダイナミックトルクベクタリングAWD」、ホンダは「SH-AWD」、マツダでは「G-ベクタリングコントロール」など各社で個別の名称が与えられ、制御方法にも少し違いはありますが、おおまかな機能は一緒と考えて良さそうです。

 では、このトルクベクタリングは、どのようなシーンで効果を発揮するのでしょうか。

 もちろんSUVで悪路を走行しているときにも有効なのですが、むしろ一般道のほうが効果を体感できるかもしれません。

 たとえば山岳路の曲がりくねったアップダウンの激しい道などを走行中に、オーバースピードでコーナーに入ってしまってもステアリングを切ったぶんだけ曲がり、車体が横滑りするのも自動制御してくれます。

 またトルクベクタリングは単体で作動するというより、これに付随するほかの機能と複合的に作用することで、より高い効果を発揮するといいます。

 現在の機構は、駆動力を4輪独立して電子制御するだけでなく、制動力(ブレーキ)も同時に制御してくれるのがポイント。コーナリングでは外側のタイヤに駆動力を回すだけでなく、同時に内側のタイヤも軽く制御して曲がりやすくしており、運転がうまくなったように感じられるかもしれません。

 ちなみに駆動力(トルク)を制御して挙動を安定させるという点では、「スタビリティコントロール」を装備しているクルマも多いでしょう。

 トルクベクタリングと似ていますが、作動する領域が違います。スタビリティコントロールはクルマが横滑りをはじめると機能し、強制的に挙動を安定させるのに対し、トルクベクタリングは挙動が乱れる前に適度なトルク配分を電子制御して事前に挙動を安定させてくれるものです。

※ ※ ※

 せっかくトルクベクタリングが搭載されていても、タイヤが十分な性能を発揮できる状態になければ意味がありません。

 日頃からタイヤの状態や空気圧のチェックをして適切なコンディションを保つことで、初めてトルクベクタリングの恩恵が受けられるということを覚えておきましょう。

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