日産ではない日産車? 本格4WD「謎のSUV」発表!新型「パラディン」って? 手掛ける鄭州日産、中国で誕生
くるまのニュース / 2024年4月25日 8時40分
鄭州日産では日産ブランドのみならず、さまざまなブランドで展開される車種を製造しています。新たに誕生した「鄭州日産のパラディン」とはどんなクルマなのでしょうか。
■新たな日産? 鄭州日産とは
日産はセダンやSUVなどさまざまな車種を中国で生産・販売していますが、その中でもひときわ特異な雰囲気を持つモデルがあります。
いったいどのようなクルマなのでしょうか。
中国国外の自動車メーカーが中国国内で自動車を生産する場合、2022年までは現地メーカー等との合弁会社を設立する必要がありました。
現在はその原則が撤廃されていますが、それ以前より組まれていた合弁会社を引き続き継続させる場合がほとんどであり、日産もその例に漏れず中国にて主に2つの合弁会社を設けています。
一つ目は中国の国営メーカー「東風汽車集団(DFG)」との合弁会社「東風汽車有限公司(DFL)」傘下に位置する「東風日産乗用車公司(DFN)」です。
そしてもう一方は同じくDFL傘下の「鄭州日産(ZNA)」で、東風日産が乗用車を中心として製造・販売をおこなうのに対し、鄭州日産ではピックアップトラックやSUVなどのオフロード車種を手がけているのを特徴とします。
鄭州日産は1993年3月に日産、そして中国国有の投資会社「中信集団(CITIC)」などの出資を受けて河南省鄭州市に誕生しました。
1999年には「ダットサン」や「NP300」など多くの名称で知られたピックアップトラック「D22」の製造を中国国内で開始します。
日産ブランド下のD22は南アフリカ向けに展開されていた「NP300 ハードボディ」が2022年に生産終了したことで途絶えました。
一方で鄭州日産が製造する東風ブランドのピックアップトラック「リッチ」はD22のプラットフォームをそのまま流用しており、D22は1997年の初登場から27年間にわたって今もなお製造されている形になります。
そんな鄭州日産では日産ブランドのみならず、さまざまなブランドで展開される車種を製造しています。
また、フルモデルチェンジによって古くなった日産車種を東風ブランドの車種として再度発売することもあり、他の日系メーカーの合弁会社とは異なる関係性がユニークです。
鄭州日産は現在、日産のエンブレムを冠するモデルとしてピックアップトラック「ナバラ(D23型)」と、先代エクストレイルをベースとする「エクストレイル クラシック」の2車種を生産しています。
過去にはNV200の中国現地生産も手がけておりましたが、現在は終了しています。
そして東風汽車のエンブレムを冠する車種としては日産 D22がベースの「リッチ」、D23がベースの「リッチ6」「リッチ7」、そして「リッチ7」のベッド部に背高のキャノピーを追加したSUV「パラッソ」を製造しています。
これまでの鄭州日産は「日産」か「東風」、いずれかに属する車種を生産・販売してきました。
ですが2023年にはどちらにも属さない「鄭州日産」としてのSUVが登場しました。それが「パラディン」です。
パラディンは中国市場で非常に長い歴史を持つクルマです。
北米で「エクステラ(WD22型)」として知られる車種の中国向けモデルとして2003年に初登場しました。
当時は中国メーカーの車種もまだ未発達であり、その状況下で登場したパラディンは人民の足だけでなく、インフラ会社の作業車や各都市の警察車両などとして大活躍。
また、当時は「ダカール・ラリー」が中国国営放送で中継されていたこともあり、パラディンはテレビを通してその輝かしい成績の印象を中国国内に強く植え付けました。
初代パラディンは2013年モデルを最後に生産を終えましたが、初代登場から20年が経った2023年、その伝説的な車名が復活しました。
新たに生まれ変わったパラディンは「鄭州日産」のSUVとして登場し、前に冠するエンブレムもこの新しいパラディンのために「はためく戦旗」をイメージして作られたものです。
新型パラディンの開発を指揮した田村和久氏によると、当初は東風のエンブレムを冠し、東風のSUV「MX8」として展開する予定だったとのこと。
ですが東風のエンブレムは商用車のイメージが強く、それでは失敗すると田村氏は主張したそうです。
一方で日産のエンブレムも諸事情で使うことが叶わなかったため、「鄭州日産のパラディン」という第3の存在として歩むことになったと言います。
■新たに誕生した「鄭州日産のパラディン」どんなクルマ?
パラディンは2020年モデルをもって中国で生産終了した「テラ(中国名:途達)」をベースとしているものの、内外装ともに大幅に刷新されています。
内装では昨今の消費者の好みを反映させ、中央に12インチ(下位グレードでは10インチ)の縦型センターディスプレイを新設したのが大きな特徴となります。
また、パワートレインではテラがQR25DE型2.5リッター直列4気筒+6速MT/7速ATを搭載していたのに対し、パラディンでは三菱の現地合弁「瀋陽航天三菱」が生産する4K31TD型2リッター直列4気筒ターボエンジン+8速ATを搭載します。
他にも、シートヒーター/ベンチレーターや運転席8-way/助手席4-wayパワーシート、電動リアゲート、自動格納サイドステップなどの快適装備を搭載、長距離でも疲れにくい4WD車であるとアピールしています。
鄭州日産の発表会
また、2024年4月にはパラディン20周年を記念する特別仕様車「記念版」が発売されました。
この特別仕様車はよりハードなオフロード環境でも耐えうることを想定して開発され、水深の深い場所での走行を可能とするシュノーケルやフロントスキッドプレート、オフロードタイヤなどを装備しています。
また、目玉要素として日本のサスペンションメーカー「テイン」と共同開発した別タンク構造の車高調整式ショックアブソーバ「4×4 DAMPER GRAVEL 2」を採用しました。
これにより最低地上高は通常の+33mmである248mm、アプローチアングルとディパーチャーアングルはそれぞれ+1度と+3度の33度/30度となります。
パラディンの通常モデルは16.98万元(約362.8万円)から26.18万元(約559.4万円)で販売されているのに対し、200台限定の「記念版」は24.68万元(約527.3万円)となります。
鄭州日産では「SUV」と「ピックアップトラック」を2本の柱と捉え、東風日産や他のメーカーとはひと味違うオフロード体験を提供するとしています。
また、パラディンに関しては他のサイズも揃えるシリーズ化を図っていくとのことで、今後の計画に期待が寄せられます。
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