怒り心頭! コンビニの駐車場を「赤信号ワープ」で無断通過…これって法律違反? 過去には死亡事故も 危険な「ショートカット」がなかなか逮捕できないワケ
くるまのニュース / 2024年10月17日 11時10分
赤信号待ちを避けるため、交差点に面した施設の駐車場を無断で通過していく「コンビニショートカット」。過去には死亡事故も起きている危険な行為ですが、どういった法律違反になるのでしょうか。
■コンビニの敷地を無断で通過
交差点を左折する際、信号が青になるのを待っているとします。
すると後ろのクルマが、左側にあるコンビニの敷地に入っていき、そのまま左折先の交差道路に合流していってしまいました。
赤信号を待つ必要が無く「ラッキー」と思ったのでしょうが、コンビニからしてみれば、自分の店で買い物をするわけでもないのに、自分の都合で勝手に通り抜けられたように感じます。
こういった運転行為は法律違反にならないのでしょうか。
こうした行為は、通称「コンビニショートカット」などと呼ばれ、社会的に問題視されるようになりました。
コンビニのほか、スーパーマーケットやショッピングモール、ホームセンター、ガソリンスタンドなどでも、交差点の2面に接している敷地であれば、ショートカットの対象として「利用」されてしまいます。
さらに、渋滞の車列の前に行くために、コンビニへ手前出入口から入り、先の出入口から出て車列へ再合流する「コンビニワープ」というケースも多数報告されています。
こうした場所は「私有地」であることを横においても、基本的に「クルマを停め、クルマから下りて歩き、施設まで歩いていく」という場所です。
つまり、歩行者とクルマが混在することが前提の場所。駐車・発進するクルマもそれを念頭において十分徐行していることが前提ですし、通過交通としての交通量も想定されていません。
もしこうしたショートカットが常態化すれば、駐車場の交通量が増加し、歩行者にとって常に危険と隣り合わせになります。ドライバーの意識は常に駐車ではなく「その先」に向いていて、駐車場にいる人々のことへの注意はおろそかになっています。なぜなら、ドライバーにとっては「一般道路」と同じ扱いで走行していて、脳内では一般道路のように急に飛び出してくる人もそうそういないことになっているからです。
そうした「ここも一般道路だ」と勝手に認定して走行したことで、死亡事故も発生しています。大分県宇佐市で2020年3月、焼肉店の駐車場で、利用客でないただの通過利用で走行した軽トラックに、3歳の女の子がはねられ、死亡するという痛ましい事故になりました。
■「我が物顔で通過」どんな法律違反になる?
道路交通法で、こういった「コンビニショートカット」「コンビニワープ」は取締りできないのでしょうか。
コンビニのイメージ(画像:写真AC)。
実はこのケース、あくまで「私有地」で起きていることなので、基本的には道路交通法の取締りの対象にはなりません。道路交通法における「道路」とは「公道」のことだからです。そのため、「コンビニショートカットをしたので違反です」ということにはなりません。
しかし、「事故を起こした場合」は別です。こちらは道路交通法にも「道路外致死傷」(第103条)という条項があり、一般的な処罰とは別に「行政処分」で対応しています。
その行政処分は重く、免許取消もしくは免許停止。その程度と期間は、起こした事故の重大性で細かく分かれています。
具体的には、死亡事故であれば「1年の取消」、不注意の傷害事故であれば治療期間が15日以上30日未満で「停止30日以上」、30日以上3か月未満で「停止60日以上」、3か月以上もしくは後遺障害ありで「取消1年」になります。もし「危険運転」など悪質な場合は、死亡事故で取消8年など、さらに重処分となります。
行政処分だけではありません。事故そのものの処罰は別の法律で裁かれることになり、私有地で起きた場合でも、もちろんその責任と処分は免れません。
まず、事故に対する刑事責任は、「自動車運転処罰法」第5条の「過失運転致死傷罪」がまず問われ、「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」の対象となります。この法律は比較的新しく、2013年に誕生したばかり。もともと「刑法」の条文でしたが、こちらへ移管されました。
さらに、その行為が悪質だと判断されれば、同じく自動車運転処罰法第2条の「危険運転致死傷罪」という重罪が認められる可能性もあります。こちらは、致傷罪であれば「15年以下の懲役」、致死罪であれば「1年以上の有期懲役」と、厳罰が科せられるようになっています。
■「事故が起きないと罰則無し」って…?
このように、コンビニの駐車場を、利用目的なしで通過すること自体を、道路交通法で取り締まることはできません。
コンビニのイメージ(画像:写真AC)。
いっぽう、「利用目的なしで通過する」行為自体は、コンビニ管理者の意図に反するとすれば刑法第130条の「住居侵入罪」に問われる可能性があります。管理者が「コンビニ利用者以外は通行禁止」と明記してあるのを知りながら通行すれば、なおさらその違法性が強く問われることとなります。
とはいえ、現行犯逮捕や刑事告訴がない限り、ドライバーが住居侵入罪であっさり捕まることは現実的ではありません。こうした状況に、コンビニ側も頭を悩ませているといいます。
大手コンビニチェーンの支店スタッフは「ショートカットは1日に数件あります。事故もありました…もちろん駐車場で起きた事故については責任を持たないと明記しているのですが、それでも現場検証で通行不可になると、店舗営業に影響は出ますよね」と話します。
「立地的にどうしてもそうしたショートカットが頻繁に起きる店舗はあります。入口には『通り抜け厳禁』という看板を置いているのですが、なかなか難しいです。通り抜けなんて一瞬ですから、注意するヒマも無いんですよね。それでも『店の前で危ない思いをした』というお客様の声もあり、対応に苦慮しています」
※ ※ ※
「事故を起こさなければいいんだろ?大丈夫、大丈夫」という論理がまかり通っているのが、コンビニショートカットの現状と言えます。しかし、一度事故が起きてしまうと、その事故の結果は被害者にとって重大なものになる可能性があります。
モラルに欠けた危険な行為を「事故が起こる前に抑止する」ためには、法や取締りに関してさらなる見直しが必要なのかもしれません。
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