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全長4.2mで6速MT! レクサス「小さな高級車」に「304馬力のスポーツ仕様」登場! 高性能「ターボ4WD」×上質インテリア採用! 「LBX RR」は“現代版ホットハッチ”か?

くるまのニュース / 2025年1月4日 11時10分

レクサスのコンパクトSUV「LBX」に追加されたハイパフォーマンスバージョンの「MORIZO RR」。小さな高級車でスポーツカーというその成り立ちを、ちょっと懐かしい視点を交えて探ります。

■小さな高級車として成功した「LBX」

 2024年7月、レクサスは同ブランドの最小SUVである「LBX」に、「MORIZO RR」というスポーツグレードを追加。大きな話題を呼んでいます。
 
 実のところ、「レクサスのSUVのスポーツグレードね。ふぅーん」とスルーしてしまう人もいるかもしれないと思うのですが、LBX MORIZO RRは、いろいろな意味でいまの時代を象徴した、大いに注目すべきモデルといえます。

「GRヤリス」ユニット搭載! 新型「LBX MORIZO RR」「GRヤリス」ユニット搭載! 新型「LBX MORIZO RR」

 LBXはいわゆるBセグメントに属するクロスオーバーSUV。トヨタ「ヤリスクロス」「ヤリス」「アクア」「シエンタ」などと同じ「GA-Bプラットフォーム」を用いて開発されており、事実上のヤリスクロスの兄弟車です。

 しかしレクサスブランドで販売されるため、車体は完全に専用のもの。

 さらにボディ剛性・乗り心地の良さ・パワートレーンの性能向上が図られているほか、静粛性・高級な内装などを備えており、レクサス各車に匹敵する上質さが与えられています。Bセグメントといえば小型車。つまりLBXは「小さな高級車」ということになります。

 この小さな高級車は古くからあります。

「オースチン1100」をベースに、ロールスロイスの内装を仕立てていたほどの名コーチビルダー・バンデンプラ社がウッドと本革を贅沢に使った内装を作り上げた「プリンセス」。

 ルノーでは大衆車の「5(サンク)」に本革シートを奢った「バカラ」。フィアットの小型車とプラットフォームを共用しつつ、オリジナルボディと人工皮革のアルカンターラなどでシックな内外装に仕立てたランチア「イプシロン」。

 そして近年ではシトロエンの高級サブブランドDSが作った「DS3」などがあげられます。

 レクサスのクールで高級なブランドイメージ、売れ筋のコンパクトSUVというジャンル、マッチョなボディから発散される快活さ、上質な内装はたしかに魅力的で、乗りやすいボディサイズや買いやすい価格感もあってLBXはレクサスで一番売れる車種となりました。

 また「内装だけ高級」な高級車ではないことも、その理由に加えることができるでしょう。

 車体の大きさが車格のヒエラルキーを左右しがちだった日本の自動車市場では、小さな高級車は売れにくい傾向にありました。

 かつてトヨタも、「コロナ」クラスで「クラウン」やそれ以上の高級車を追求した「プログレ」、日産では「サニー」をベースに上位車種「ローレル」の意匠を盛り込んだ「ローレルスピリット」、マツダも「ベリーサ」を販売するなどいくつもの小さな高級車が生まれましたが、その多くはヒットしませんでした。

 そう考えると、LBXは日本市場では成り立ちが難しい「小さな高級車」として成功したモデルと言えます。

 なおLBXの「B」はブレークスルーを意味しますが、まさに新しい価値観を生み出しているのです。

 なおレクサスの主戦場・北米ではLBXの車体は小さすぎることから、日本・欧州向けの車種となっています。

■ホットすぎる「RR」はもはや別物か

 そのLBXに追加されたMORIZO RRの“MORIZO”とは、トヨタ自動車会長、兼トヨタとレクサスのマスタードライバー、さらにレーシングドライバーとしてもかなりの腕前を持つ、自称「ひとりのクルマ好きのおじさん」こと豊田 章男氏のサーキットネーム。

 RRは、章男氏がオーナーを務める“ルーキーレーシング”の略です。

かつての「ホットハッチ」に大人な雰囲気をプラスしたかつての「ホットハッチ」に大人な雰囲気をプラスした

 LBX MORIZO RRの開発テーマは、「レクサスらしい上質な走りと洗練されたデザインはそのままに、クルマとの対話を楽しみ、思わず笑みがあふれ、非日常の高揚感を味わえるハイパフォーマンスモデル」。

 スポーツバージョンを作るなら、単に出力をアップしたり、サスペンションを強化したり、外装をスポーティに仕立てるのは珍しいことではありませんが、MORIZO RRで驚かされるのは、プラットフォームさえも独自設計としていることです。

 GA-Bプラットフォームを主体としつつ、リアまわりに「GRヤリス」と同じ「GR-Cプラットフォーム」を流用。LBXとはまさに別物です。

 ボディのスポット溶接打点も469箇所増やすなど、徹底した剛性アップが行われています。

 パワートレインも刺激的で、最高出力304PSを絞り出すGRヤリスの1.6リッター3気筒ターボエンジン「G16E-GTS」型を搭載。

 トランスミッションは8速ATのほか、なんと6速マニュアルの選択も可能です。しかもマニュアル車では、近年では採用が少なくなったパーキングブレーキも手で引くタイプを採用しています。

 駆動方式は前後駆動配分を50:50に固定できる電子制御可変型フルタイム4WDで、前後アクスルにはトルセンLSDも備えています。

 これらのスペックを見ると、LBX MORIZO RRはもはやスポーツカー。

 小さくてパンチのあるモデルといえば、「ホットハッチ」というちょっと懐かしい言葉が思い出されますが、ハッチバック車がコンパクトSUVに置き換わりつつある現在、LBXは「現代のホットハッチ」のひとつなのかもしれません。

※ ※ ※

 小さな高級車とホットハッチ。古くからある自動車用語ですが、LBX MORIZO RRはそれらを「いまの時代」に翻訳したモデルと言えます。

 かつてホットハッチに乗っていた人が、”あの頃”の熱い気持ちを思い出せるような情熱がLBX MORIZO RRにはあります。

 価格は650万円オーバーのため決してお買い得ではありませんが、GRヤリスの外観がレーシーすぎる、年齢に合ったクルマ・落ち着いた大人のクルマに乗りたい、でも速くて楽しいクルマが欲しいというユーザーには極めて魅力的な1台ではないでしょうか。

 冒頭で記した「レクサスのSUVのスポーツグレードね。ふぅーん」という感想が、覆るクルマなのは間違いないと思います。

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