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湧水に浸すと発電できる「湧水温度差発電」

共同通信PRワイヤー / 2024年6月10日 14時0分


今回想定している湧水と大気の温度差が小さい環境では、熱電モジュールの出力電圧は、数百mV程度であるため、温度記録計が動作する電圧までその出力電圧を昇圧するDC-DCコンバーターが必要です。また、安定に給電できるように、キャパシターを熱電モジュールと組み合わせて使っています。温度記録計には、液晶表示機能が付いたワイヤレス温度記録計(T&D TR42A)を用いました。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406061829-O2-B90uPxNI


長野県松本市(緯度:36.23°N、経度:137.97°E)の水路に温度差発電装置を設置して発電実験を行いました。松本市の市街地には豊富な井戸や水路が存在します。発電試験場の選定にあたり、産総研地質調査総合センターが調査、公開している日本水理地質図や地下水研究グループの研究成果などを活用しました。また、市街地に張り巡らされた水路や点在する井戸の幅、水温、水深などの熱環境の調査を地元住民の協力のもと行い、設置場所を決定しました(図2)。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406061829-O3-eyw3aBF8


湧水温度差発電は、大気と湧水の温度差を利用した発電です。湧水の温度は年間を通して約15 ℃とほぼ一定ですが、その一方で、気温は季節によって変化するため、それに伴い発電量も変化します。2022年5月、2022年8月、2022年11月、2023年1月(2月)の異なる季節に発電試験を行いました(図3(a)~(d))。1日の発電量の平均値は、5月は3.1 mW、8月は4.2 mW、11月は1.1 mW、1月は14.5 mWでした。湧水と大気の温度が等しくなる期間を除くと、ワイヤレス温度記録計を年間通して安定に動作できる電力が得られることが示されました。特に、気温が氷点下となる1月が最も効率よく発電できました。これは、湧水と大気との温度差が最も大きくなる季節だからです。また、夜間も温度差が生じるため、昼夜を問わず発電することができました。


また、2022年5月に発電した電力を温度記録計に給電する実験を行いました。湧水の温度は、一日を通して安定しており、約15 ℃でした。一方で、試験期間中の大気の温度は、天気はおおむね晴天だったことから、日中は30 ℃に達し、夜間は17 ℃に下がりました。ワイヤレス温度記録計には、電池を搭載していませんが、水路に装置を置くとキャパシターへの充電が始まり、所定の充電電圧に達すると起動し、水温を計測することに成功しました。測定データをスマートフォンにワイヤレスで送信することもできました(図4(a))。最後に、湧水温度差発電装置により給電した温度記録計により得られた水温測定の結果を示します(図4(b))。日中、日差しの影響による熱で湧水の温度はわずかに上昇するものの、夜間は、温度が一定となる様子を測定することに成功しました。この結果は、電池を搭載した温度記録計により得られた結果とも一致しました。このように、キャパシターと組み合わせることで、湧水と大気の温度差が小さくなっても、キャパシターに余分に充電した電力により、温度記録計を連続的に動作させ、無線通信でデータ収集できることを実証しました。また、湧水の熱エネルギーを電力として利用しているので、湧水と大気との間に温度差がある限り、電池切れを心配する必要もありません。この技術を用いれば、湧水の温度や気温だけでなく、湿度、圧力など、さまざまな環境計測も可能です。連続的な環境計測により、人為的な活動などによる湧水の変化の早期発見に貢献できます。このように、湧水の持つ多面的価値を示すことで、地域住民の関心を取り戻すことが可能となり、その結果として、失われつつある地域の水辺環境の復元を含めた地域資源の保全と持続的な利活用につながることが期待されます。

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