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土壌中のナノプラスチック濃度の測定技術を開発

共同通信PRワイヤー / 2024年6月14日 14時0分


ナノプラスチックは赤血球を破壊し、細胞に侵入してミトコンドリアDNAに損傷を与えることが明らかになっています。ナノプラスチックはマイクロプラスチックよりも人体への影響が大きい可能性があるため、土壌を含む地圏環境中のナノプラスチックの存在量を明らかにすることで暴露・リスク評価を行う必要があります。土壌中の微小なプラスチックの濃度を測定する従来の手法では、土壌試料を適切に前処理した後に土粒子と比重分離を行い、フィルターでプラスチックを回収します。この方法では、フィルターや装置の性能から1 µm以上の大きさのプラスチック粒子しか検出できないため、土壌中のナノプラスチックの分布状況は明らかになっていません。よって、ヒトへのナノプラスチックの暴露量評価をより詳細に行うために、土壌中ナノプラスチックの濃度評価手法を確立する必要がありました。


研究の経緯

産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 地圏環境リスク研究グループは、環境中のプラスチックのリスク評価を目指しており、プラスチックと化学物質との相互作用や、プラスチックの土壌中での移動性の解明、環境中のプラスチック分布状況の調査を行ってきました。今回はマイクロプラスチックより人体への影響が大きい可能性があるナノプラスチックの地圏環境中の分布を明らかにするために、土壌中のナノプラスチックの濃度測定技術を開発しました。


研究の内容

本研究では、粒度分布や有機物の含有量など特性の異なる6種類の土壌サンプルと203 nmのポリスチレンの微小な粒子を混合して6種類の土壌懸濁液(ポリスチレン濃度5 mg/L)を用意しました。土壌粒子とナノプラスチックの吸光度スペクトルは図1のように異なるため、1つの土壌懸濁液に対して2つの波長の吸光度を測定することで、懸濁液中の土壌とナノプラスチックのそれぞれの濃度を定量できます。今回の6種類の土壌懸濁液に対して200 nmから500 nmまでの範囲で20 nm間隔で異なる2つの波長の組み合わせを試しました。その結果、波長220~260 nmおよび波長280~340 nmの吸光度での組み合わせで、算出されるナノプラスチック濃度とサンプル濃度の5 mg/Lとの差が最小になりました。これら2つの範囲の波長の組み合わせがさまざまな性質の土壌懸濁液中のナノプラスチック濃度を算定するのに適していると考えられます。


また、ナノプラスチック含有量の異なる乾燥土壌サンプルを用意し、これらの試料から土壌懸濁液を作成しナノプラスチック濃度を測定することで(図2)、土壌懸濁液中のナノプラスチック濃度と乾燥土壌中のナノプラスチック濃度との検量線を作成しました。この検量線はナノプラスチックの土粒子への吸着を考慮したものであり、直線関係を示していました。以上から、ナノプラスチックの土粒子への吸着を考慮した検量線を作成することで、もとの土壌中のナノプラスチック濃度を正確に測定できることが分かりました。また、本技術の測定下限を明らかにするため、さまざまなナノプラスチック含有量の乾燥土壌サンプルを用意し本技術でナノプラスチック濃度を算出したところ、土壌中ナノプラスチック濃度が0.2 mg/g以上のとき、用意した6種類すべての土壌ナノプラスチック濃度を変動係数10%以内の誤差で測定できました。これにより紫外可視分光光度計を用いた乾燥土壌中ナノプラスチック濃度測定は、測定下限0.2 mg/gで有効であると示されました。

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