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約30年に及ぶ観測により、飛騨高山の森林生態系の炭素吸収に対する長期的・短期的な気候変動の影響を検出

共同通信PRワイヤー / 2024年6月26日 14時0分

 生態系の CO2 または炭素の収支(=生態系純生産量、 Net Ecosystem Production,NEP )は、光合成による吸収量(総一次生産量、 Gross Primary Production,GPP )と呼吸による放出量によって決まります。研究グループは観測タワーにおいて「渦相関法」 (1 と呼ばれる観測手法を用いて計測し続け、毎日 30 分間隔で炭素収支を算出しました(図2)。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406262742-O8-qRUgNjp3

図1 岐阜大学環境社会共生体研究センター高山試験地に設置されている観測タワー


 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406262742-O6-quJsZQL6

図2 観測タワーにおいて計測された森林の炭素収支(=光合成量―呼吸量)、光合成量、呼吸量の年々変動。これらの項目は炭素フラックス(=流束)と呼ばれ、各項目の数値は1年間あたり、森林1㎡あたりの炭素重量で表される。


 その結果、(1)1年間あたりのNEPは、森林の葉量や、光合成活動に影響を及ぼす気象条件の影響を受けて顕著な季節変化を示し、さらに年々変動すること、(2)NEPの年々変動は、呼吸による炭素放出量の年々変動よりも光合成による炭素吸収量(GPP)の年々変動の影響を大きく受けていること、(3)毎年のNEPやGPPは、夏季のNEPやGPPの大小に影響されて、これが年々変動に至っていること、(4)1年間のNEPやGPPは、森林樹木の展葉から落葉までの期間の長さの影響を受けていることが明らかになりました。また、夏季(当地では6月〜9月)のNEPやGPPの年々変動は、夏季の日射量や森林全体の葉量(葉面積指数)の影響を受けることも示されました。2004年の台風による撹乱が起きて森林の枝葉が落ちると森林の光合成量が低下しますが、その後数年から10年程度をかけて枝葉が成長すると、光合成量が増加します。

 他方で、特に最近10年間(2013―2021年)では夏季の日射量の増加と大気の水蒸気飽和度(飽差)の増加がGPPの低下を生じている可能性が示唆されました(図3)。また、1年間のうち毎日の光合成量が呼吸量を上回る期間の年々変動は、春の気温と初秋の日射量の変動の影響を受けていました。すなわち、春の気温の上昇は正味の炭素吸収の開始時期を早め、初秋の日射量の増加は正味の炭素吸収の終了時期を遅らせるというメカニズムが示唆されました。春の気温と初秋の日射量との間の関係性にはエル・ニーニョ現象(2が関与していると考えられています。

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