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超音波診断動画から肺病変の所見に必要な特徴を高精度・高速に自動検出するAIを開発

共同通信PRワイヤー / 2024年7月24日 18時0分


研究の経緯

肺エコーは、呼吸困難などの緊急事態で、患者の負担が大きいレントゲンやCTなどを利用しなくても、現場でリアルタイムに診断可能なツールです。われわれが本研究で対象にした気胸は、胸膜に穴が開いて肺からの空気が漏れて胸膜の中(胸膜腔)にたまり、肺がしぼみ呼吸困難な状態で、時に迅速な処置を求められる病態です。肺エコーを実施する人の経験が浅い場合でも、現場でリアルタイムに人工知能(AI)システムを用いて診断のヒントを得ながら診療を行うことができれば、急性期の現場での救命率の向上につながります。また、AIを応用することで、所見の見逃し防止、熟練臨床医の負担軽減、教育ソフトとしての活用による人材教育の効率化も可能です。


今回は、AIの学習方法の一つである深層学習手法を応用し、気胸に関連する基本的な所見である胸膜の位置と動きを高精度かつ高速に自動検出する技術を開発しました。深層学習には、高品質かつ十分な量の学習データが必要不可欠です。本研究では、急性期肺エコーを専門とする自治医科大学 鈴木 昭広 教授より提供された超音波診断動画を用いました。また、本研究は倫理的基準(機関および国のガイドライン)とヘルシンキ宣言に従って実施されました。この研究は、東海大学臨床研究倫理審査委員会によって承認されています(ID: 21R-048)。


研究の内容

本研究は、深層学習の一つである畳み込みニューラルネットワーク(CNNs)を用いて、肺エコー診断における重要な指標である胸膜ラインとlung slidingの自動検出に取り組みました。肺は、胸郭(1個の胸骨、12個の胸椎、12個の肋骨で構成された骨格)という“鳥かご”のような構造の中で常に呼吸によって膨らんだりしぼんだりしています。呼吸運動で肺の表面がこすれて痛まないように、①胸郭の内側と、②肺の表面は、それぞれなめらかな“胸膜(壁側胸膜と臓側胸膜)”に包まれ、こすれあう両者の間には③微量の胸水が潤滑油のように存在します(図1)。胸膜ラインは、密着しあう胸郭内部と肺表面の2つの胸膜(①と②)、そして胸水(③)が一緒に観察されるものです。Lung slidingは、肺が伸び縮みする際に、肺表面の胸膜が呼吸運動に伴って横方向に動く所見です。横方向の動きがあれば正常、無い場合は気胸が強く疑われます。


われわれは、CNNsによる胸膜ラインの自動検出の精度を評価するためにF値を用いました。F値は、適合率(陽性と予測したものの正解率)と再現率(陽性のうち正しく予測できた率)を一緒に評価する指標であり、1に近いほど予測精度が高いことを示します。F値は位置の検出精度の評価手法(今回ならば胸膜ラインの位置の検出精度)として一般的に用いられます。CNNsによる胸膜ラインの自動検出の正誤の判定は臨床医が行いました。今回用いた超音波診断動画におけるF値は0.988であり、高い精度で検出可能であることを確認しました。図2に示す赤い部分がCNNsによる胸膜ラインの検出画像の例です。

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