世界初、量子コンピュータを利用した屋外多数同時接続実験に成功
共同通信PRワイヤー / 2024年7月25日 14時0分
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202407244061-O4-5J69ogTR】
図2 本アルゴリズムを用いた上り回線非直交多元接続シミュレーションの結果
(M=4の場合。基地局における受信信号は計算機シミュレーションで生成し、D-wave社量子アニーリングマシンを利用して信号分離を実施。)
まずは計算機シミュレーションによって基地局の受信信号を生成し、本アルゴリズムの性能評価を実施しました。具体的には、大規模な組合せ最適化問題(QPSK信号(M=4)、基地局のアンテナ1本当たりK=7まで、K=7のときの組合せ数は1万6千通り以上)に対して、古典コンピュータを用いた従来の信号分離と比較して誤り率特性が同等であることを確認しました(図2左参照)。また、本アルゴリズムを用いることで、信号分離処理に要する計算時間(量子アニーリングに要する時間の積算値として計算)は、古典コンピュータを用いた従来手法の計算時間と比較して、約10分の1に短縮できることを示しました(図2右参照)。
次に、本アルゴリズムを実装した無線通信実験系を開発し、屋外における電波発射による原理検証を目的とした実験(QPSK信号(M=4)、基地局のアンテナ1本当たりK=4)を行い、エラーフリー(誤り率がゼロ)で伝送できることを確認しました(実験時の信号対雑音電力比は約26 dB)(図1参照)。その結果、量子アニーリングマシンを用いた信号分離処理による非直交多元接続のオンラインでの屋外実験に世界で初めて成功しました。
今後の展望
今回の成果は、量子アニーリングマシンを用いた実用的な演算手法が無線通信信号処理に適用可能なことを実証したものであり、次世代移動通信システムが求める多数同時接続性能(5Gと比較して10倍)の実現に寄与するものです。今後、10倍の達成に向けた演算手法の改良や実証を進めていきます。また、次世代移動通信システムでは、大規模なビームフォーミングにおいても、大規模な組合せ最適化問題を解く必要があり、本アルゴリズムの応用が期待されます。
本アルゴリズム自体は無線通信信号処理以外にも適用可能であると思われ、今後、様々な組合せ最適化が求められる分野・領域への適用が期待されます。その他、本技術の実用化を加速するため、量子アニーリングマシン以外の量子効果を活用した計算機(量子ベクトルアニーラ等)や演算手法(量子インスパイアード等)を用いた際の評価を進めていきます。
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