1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

立方体型の超原子が結合した二次元シートを創出 〜高効率な水素発生触媒の開発に期待〜

共同通信PRワイヤー / 2024年7月26日 16時0分

立方体型の超原子が結合した二次元シートを創出 〜高効率な水素発生触媒の開発に期待〜

図4

1.概要

 東京都立大学大学院理学研究科の中西勇介助教、遠藤尚彦(大学院生)、宮田耕充准教授、名古屋大学大学院理学研究科の神田直之(当時、大学院生)、相崎元希(当時、大学院生)、同大学院工学研究科の平田海斗特任助教、同大学院工学研究科/金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の高橋康史教授、産業技術総合研究所極限機能材料研究部門の劉崢上級主任研究員、同ナノ材料研究部門の林永昌主任研究員、千賀亮典主任研究員、大阪大学産業科学研究所の末永和知教授、名古屋市立大学大学院理学研究科の青栁忍教授、筑波大学数理物質系の丸山実那助教、高燕林助教、岡田晋教授らの研究チームは、立方体型の硫化モリブデンのクラスター(注1)(超原子(注2))がシート状に結合した二次元物質「超原子層」を発見し、その構造的な特徴や電子構造、触媒活性を解明しました。ナノ空間に閉じ込めた単層(ナノリボン(注3))を透過電子顕微鏡で直接観察することによって原子配列を可視化し、構造決定に成功しました。また、基板上に合成した層状物質の薄片試料における触媒活性の評価では、水素発生反応の高い触媒活性を示すことを実証しました。本研究成果は高効率な水素発生触媒の開発に向けた材料設計の指針になることが期待されます。この研究成果は、2024年7月26日付でドイツの科学雑誌『Advanced Materials』オンライン速報版に掲載されます。


2.ポイント

・立方体の硫化モリブデン超原子(Mo4S4クラスター)が塩素(Cl)原子を介してシート状に結合した超原子層「Mo8S8Cl11」を合成。

・カーボンナノチューブの内部空間を用いたテンプレート反応によって欠陥や原子配列の乱れが少ないMo8S8Cl11の単層を合成・単離し、透過電子顕微鏡観察で構造解析に成功。

・基板上に合成した薄片試料が水素発生反応の高い触媒活性を示すことを実証。


3.研究の背景

 黒鉛(グラファイト)の単層であるグラフェンの発見以来、さまざまな層状物質の単層〜数層が剥離され、三次元物質には見られない光学特性や電子輸送特性を示す二次元物質「原子層」が次々と発掘されています。層状物質を剥離して二次元物質を合成するトップダウン型の研究が進む一方、有機分子やナノ粒子などを繋げて新たな二次元物質を生み出そうというボトムアップ型の研究も盛んになっています。遷移金属カルコゲナイド(注4)のクラスターは、構造・組成の多様性と対称性の高い分子骨格から、多彩な二次元物質の構成単位として有望です。原子と類似した電子構造をもつ遷移金属カルコゲナイドのクラスターは超原子とも呼ばれ、これらを構成単位とした三次元集積体は半世紀前から研究されています。中でも、立方体型のM4X4クラスター(M:遷移金属、X:カルコゲン)は立方格子やカゴ状(クラスレート)などの三次元集積体を形成し、組成や配列構造によって強磁性や超伝導などの性質を示します(図1)。このようなクラスターがシート状に配列した「超原子層」は、二次元特有の配列構造や分子間相互作用によって超原子単体には見られない特性の創発が期待されます。しかし、立体的な分子構造をもつM4X4クラスターをシート状に配列することは容易ではなく、これまで超原子層の合成例はありませんでした。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください