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長寿命な小型酸素センサーを開発

共同通信PRワイヤー / 2024年8月20日 14時0分


開発の社会的背景

血液ガス分析装置は、血液中の酸素や二酸化炭素の分圧、pHを分析する検査装置で、その診断結果から患者の病態を知り、治療方法を決めています。特に、呼吸不全などの重篤患者の病態を把握できる緊急検査装置として重要な役割を担っており、救急外来や手術室など緊急性の高い医療現場で使用されています。また、一般的に使用されるパルスオキシメーターなど簡便な手法では正確な血中分析が困難なため、緊急度の高い医療現場では使用が限定されています。現在は、連続使用が可能な中・大型装置が主流になっており、その市場規模は2020年には2,400億円であり、2027年には3,500億円に達すると予想されています。


こうした中、特に小児や新生児の血液中ガス分析において求められているのが、装置を小型化し、検体量(採血量)が少なくて済むようにすることです。そのため、小型酸素センサーの開発がさかんに進められています。しかし、従来の小型酸素センサーには、Ag/AgCl参照極から溶出した銀が作用極上に析出することで、短時間で正確な分析ができなくなってしまうという問題があり、小型化の障害となっていました。センサー性能の低下を防ぐ参照極を使い、連続測定可能な長寿命で小型の血中酸素濃度センサーの開発が求められていました。


研究の経緯

このような背景から、産総研、テクノメディカ、東北大学、富士シリシア化学、筑波大学は、共同で新規参照極作製に取り組み、連続測定可能な長寿命小型酸素濃度センサーに向けた開発を進めてきました。


研究の内容

小型酸素センサーは、作用極、対極、参照極、三つの電極を覆う電解質とガス透過膜で構成され、作用極と対極には白金が使用されます(図1(a))。作用極と対極間を流れる電流値を測定することで、作用極で還元される酸素量、すなわち血中の酸素分圧を測定できます。その際、参照極と作用極間に一定電圧を印加することで、測定精度を担保しています。しかし、従来の小型酸素センサーでは、Ag/AgCl参照極から溶出した銀が作用極上に析出することで(図1(b))、作用極と対極間を流れる電流値が変化し、正確な酸素分圧が測定できなくなっていました。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202408154967-O2-1rSPE83S


われわれが開発した酸素センサーは、プルシアンブルーを高分散担持したグラフェン被覆多孔性シリカ球(PB/G/PSS)を参照極にすることで、従来5 cm程度の大きさであったセンサーを直径2.5 mmに小型化し、かつ、連続使用を可能としました(図1(c))。参照極には、表面積が大きいこと、導電性が高いこと、溶解度が低い酸化還元反応を示す化学種であること、といった特性が要求されます。本研究では、比表面積の大きな多孔性シリカ球の表面を、導電性のあるグラフェンで被覆し、さらに溶解度積が塩化銀の約10の31乗分の1で酸化還元反応を示すプルシアンブルーを担持することで、参照極に要求される特性をもつ材料の開発に成功しました。また、プリント印刷により粒子を緻密に充填した電極を形成しました(図1(c))。

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