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流動する溶融金属の凝固過程を広範囲で可視化する装置を開発

共同通信PRワイヤー / 2024年9月3日 14時0分


なお、本研究開発は、独立行政法人 日本学術振興会 科研費若手研究「凝固その場観察による金属間化合物の偏析過程の解明とアルミニウムリサイクルへの応用」(課題番号:23K13585)による支援を受けています。


研究の内容

放射光X線イメージングは、X線の広がりが小さいため、大面積での観察には適していません。また、厚さ数百µm程度の薄い試料を用いるため、溶融した試料の流動状態を作ることは困難です。そこで、X線源、電磁撹拌装置およびX線検出器を従来の放射光X線イメージングでは難しい鉛直方向に配置することにより、流動する溶融金属のX線透過像を大面積かつ高解像度で撮影する方法を考案し、撹拌凝固過程を可視化する装置を開発しました。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202408295605-O2-EGrp0E82

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202408295605-O3-YrXAfj6C


装置全体はX線源、フラットパネル型X線検出器、制御PC、電磁撹拌装置、インバーターおよびるつぼで構成されます。X線イメージング部の模式図を図1に示します。るつぼの上方に設置したX線源から放出されたX線は、るつぼ中の溶融金属試料に入射・透過し、るつぼの下側に置いたX線検出器に入射します。るつぼは、あらかじめ電気炉に入れて試料を溶解し、X線を照射する直前に電磁撹拌装置に静置します。電磁撹拌装置は、3相交流モーターの原理を応用しており、るつぼの外側から非接触で溶融金属に流動を付与します。また、電磁撹拌装置は中空構造を有するためX線源とるつぼの試料表面の間に障害物がなく、X線を減衰させずに流動している溶融金属に照射することができます。インバーターを用いて電磁撹拌装置に与える電流の周波数と回転方向を制御することにより、溶融金属の流動条件の制御も可能です。撮影範囲は、X線検出器の画素数と画素サイズ、X線源と溶融アルミニウム間の距離(FOD: Focus-to-Object Distance)、およびX線源とX線検出器の距離(FID: Focus-to-Image receptor Distance)の比に依存します。X線検出器には、産総研が独自に開発した3840×3072 画素の解像度を持ち、画素サイズが83 µmのフラットパネル型検出器を使用しました(2019年4月22日 産総研プレス発表)。FODおよびFIDをそれぞれ140 mmおよび800 mmになるようにX線源、るつぼおよびX線検出器を配置しました。この条件でX線イメージング装置を構成すると、観察視野は55.7×44.5 mm2になるため、径50 mmのるつぼに入れた溶融金属全体の透過X線画像を撮影することができます。開発当初は、透過X線画像の水平方向にノイズが現れ、晶出した結晶と溶融金属の境界が不明瞭となる問題がありましたが、るつぼ材質の変更や電磁シールドの追加 など装置改良を進めることにより、ノイズ量の低減と空間分解能の向上を達成しました。開発装置の改良前後における透過X線画像の比較を図2に示します。

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