人の耳には聞こえない低い音による自然現象モニタリングに向けて
共同通信PRワイヤー / 2024年10月4日 18時0分
なお、この技術の詳細は、2024年10月4日(英国夏時間)に「Metrologia」に掲載されます。
下線部は【用語解説】参照
開発の社会的背景
人が音として知覚できない20 Hz以下の音はインフラサウンドと呼ばれ、噴火、津波、雪崩といった大規模な自然現象から生じています。インフラサウンドは可聴音と比較すると空気吸収による減衰が小さく遠方まで伝わるため、近傍からの観測が危険なこれらの自然現象のモニタリングに活用することが可能です(図1)。近年、火山噴火由来のインフラサウンドを測定対象とした観測網の整備や津波予報の高精度化を目指した研究などが進められています。具体的には、複数地点で観測したインフラサウンド波形を比較することで発生場所を推定したり、シミュレーションにより作成したインフラサウンド波形と観測した実波形を比較することで災害の発生機構を解析したりする研究が行われており、信頼性の高い観測値が必要とされています。
インフラサウンド観測には、マイクロホンだけでなく気圧計などの原理の異なる計測機器も用いられます。これらの音圧センサーは機器により異なる感度特性を示すため、同一の自然現象についても異なる音圧センサーを使用した場合は観測結果が一致しないことが問題となっていました。この問題を解決するために、音圧センサーの感度を評価したうえで、測定結果を適切に補正することが求められています。
音圧センサーの中には測定現場から動かせないものも多くあります。これらのセンサー感度を評価するためには、測定現場に感度がすでにわかっている基準センサーを持ち込み、同一音圧を与えたときの両者の出力を比較するという作業が必要となります。しかし、1 Hz未満の周波数域において音圧センサーの感度校正サービスは提供されていないため、感度がわかっている基準センサーが存在しないという問題があります。私たちは、可搬性や可聴域への拡張性を考慮してマイクロホンが基準センサーの有力候補であると考え、基準となるマイクロホンの評価に取り組みました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202410027510-O2-JTA9m2J7】
研究の経緯
産総研 計量標準総合センターでは、音圧センサーの一種であるマイクロホンの感度校正を通じた音響計測の信頼性確保に取り組んできました。これまで1 Hzから20 Hzにおいてマイクロホンの感度評価を行う際は、マイクロホンをセットした評価装置(レーザーピストンホン装置)のピストンを駆動し、装置の内容積を変化させることで音圧を発生させる方式を採用していました。レーザーピストンホン装置では、ピストン変位を計測して発生音圧を計算するのと同時に、マイクロホンが出力する信号(電圧など)を計測することで、評価したいマイクロホンの感度を求めます。しかし、周波数が低くなるほど空気粘性の影響が小さくなるため、ピストン接続部の隙間から音が漏れやすくなり、ピストン変位から計算した音圧と実際に発生している音圧が乖離するようになります(概要図)。これまでの研究として、音漏れの影響を理論と実験を組み合わせて推定し、発生音圧の補正式を作り上げることで、評価可能な周波数域を拡張してきました(参考文献)。しかし、周波数が低くなるほど発生音圧が非常に小さくなってしまうため、マイクロホン評価への適用は0.1 Hz程度が限界でした。そこで、音漏れが発生しない、新たな原理を採用した評価装置の開発に取り組みました。
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