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銅酸化物高温超伝導体Bi2212の紫外・可視光領域における大きな光学的異方性の起源を解明

共同通信PRワイヤー / 2024年11月20日 11時0分


(3)研究の波及効果や社会的影響

本研究の注目すべき点は、Bi2-xPbxSr2CaCu2O8+δ単結晶の劈開性を活かし、作製した超薄片単結晶試料に紫外・可視光を透過させることで、透過測定によってこの大きな光学的異方性の起源を解明したことです。紫外・可視光をプローブとして用いた透過測定のアプローチは我々の研究グループ独自のものであり、これにより銅酸化物高温超伝導体の光物性とエネルギーギャップを含む電子バンド構造、とくに「外殻電子の遷移」に関する知見を得ることができました。さらに、Bi2212結晶におけるBiのPb置換は、不整合変調の抑制と同時に、直線複屈折や直線二色性といった光学的異方性を大幅に低減させることが明らかとなりました。この光学的異方性の低減は、将来の実験において光学活性や円二色性の測定精度を向上させる上で重要な成果です。これにより、高温超伝導のメカニズム解明において重要な課題である擬ギャップ相※7および超伝導相における対称性の破れの有無を検討することが可能となり、さらなる高温超伝導体の開発につながることが期待されます。


(4)課題、今後の展望

「常温超伝導」の実現は長年の人類の夢であり、そのためには高温超伝導体における電子対形成や超伝導メカニズムの解明が必要です。常温超伝導が実現すれば、超低損失送電やリニア、医療用MRI、量子コンピュータなど、さまざまな分野で社会的・経済的な恩恵が期待されます。本研究により得られた知見を元に高温超伝導体のメカニズムに関する理解が深まることで、常温超伝導の実現に一歩近づき、これらの技術革新に大きく貢献する可能性があります。


(5)研究者のコメント

現在我々は、測定試料を低温まで冷却可能なG-HAUPを新たに構築しています。今後、低温冷却G-HAUPを用いて擬ギャップ相および超伝導相における光学活性や円二色性を測定することにより、擬ギャップ相における対称性の破れの存否を明らかにするとともに、高温超伝導体が持つ特別な秩序を解明することを目指して研究を進めて行きます。


(6)用語解説

※1 銅酸化物高温超伝導体

CuO2層を含む構造を持ち、従来の金属超伝導体よりも高温で電気抵抗がゼロになる特性を持つ材料。その超伝導メカニズムは従来のBCS理論では説明できず、世界中で精力的に研究が続けられている。


※2 バーディーン・クーパー・シュリーファー(BCS)理論

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