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シリコン量子ビット素子の特性が長い周期で変化する主な原因を特定

共同通信PRワイヤー / 2024年12月8日 6時30分


高集積量子コンピューターに向けて研究開発が盛んに進められているシリコン量子ビット素子においても、長い周期で電流-電圧特性が変化する現象が観測されています。シリコン型の中でも、Fin型(チャネルが立体的で魚のヒレに例えられる形状)のシリコン量子ビット素子は高集積化への期待が一段と高く、世界的に研究開発が進められているものの、長周期の特性変化の原因については未解明で、実験的な検証も十分に進んでいません。高度で実用的な量子計算を可能にする高集積量子コンピューターの安定な動作に向けて、シリコンFin型量子ビット素子における長周期特性変化の原因解明が待たれていました。


研究の経緯

産総研は、高集積量子コンピューターの実現に向けて、シリコン量子ビット素子およびその制御用エレクトロニクスとしてクライオCMOS回路・デバイスの研究開発に取り組んでいます。クライオCMOSデバイスの研究開発としては、これまでに極低温動作トランジスタのオン電流制限要因の理解(2022年国際会議VLSIシンポジウム発表)や回路の正確な設計に向けた極低温でのスイッチング特性の決定要因解明(2023年12月10日 産総研プレス発表)、極低温でのノイズ増大メカニズムの解明(2020年国際会議VLSIシンポジウム発表)、ノイズ発生源の特定(2023年6月12日 産総研プレス発表)など、世界をリードする研究成果を挙げてきました。


産総研 先端半導体研究センターは、シリコン量子コンピューターに向けた量子ビット素子の研究開発を進めており、今回、これまでに取り組んできたトランジスタの評価・解析手法を応用し、シリコンFin型量子ビット素子の長周期特性変化の主な原因を突き止めました。


なお、本研究開発は、文部科学省光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)「シリコン量子ビットによる量子計算機向け大規模集積回路の実現(2018~2027年度)」(JPMXS0118069228)による助成を受けています。


研究の内容

シリコンFin型量子ビット素子では、数十秒程度の間隔で電流値が変化しては元に戻る、といった周期的な特性変化が観測されます(図1)。この周期的な変化が存在する状態で計算を行うとエラーを生じますが、原因の特定は容易ではありませんでした。シリコンFin型量子ビット素子は、量子情報を担う電子をシリコン中に閉じ込める必要があるため、多数のゲート電極を利用します(図2左図)。それぞれのゲート電極には異なる電圧を設定する必要があるため、 周期的な特性変化をもたらす要因がどのような電圧条件で生じるかの特定は、量子ビットの動作原理上、非常に困難でした。そこで、シリコンFin型量子ビット素子と同じ材料・構造で、ゲート電極が一つしかない素子としてFin型のトランジスタの利用を考案しました(図2右図)。この場合、ゲート電圧条件を変えながら、電流値の時間変化の追跡が可能となります。今回、ゲート電極をFinの上部にのみ形成することで、Fin型量子ビット素子と同じゲート構造としました。本研究ではこの方法で、周期的な特性変化の原因の特定に世界で初めて成功しました。

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