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シリコン量子ビット素子の特性が長い周期で変化する主な原因を特定

共同通信PRワイヤー / 2024年12月8日 6時30分


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図3左図は、作製したFin型トランジスタの極低温(4 K)におけるドレイン電流-ゲート電圧特性を示しています。ゲート電圧を大きくすると、電流値が増大し、オフ領域からオン領域に移ります。オフ領域とオン領域の間の状態をサブスレッショルド領域と呼びます。各領域において一定の電圧下で、電流値の時間変化を追跡した結果が図3右図です。この結果から、オフ領域(図3右図(1))とオン領域(図3右図(3))では電流値が安定していますが、サブスレッショルド領域(図3右図(2))の電圧条件においてのみ、電流値が数十秒間隔で増大と減少を繰り返す、周期的な変化が現れることがわかりました。これは、Fin型量子ビット素子における周期的な特性変化が、サブスレッショルド領域の特定の電圧条件において生じていることを示唆しています。


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サブスレッショルド領域の電圧条件では、トランジスタの特性はバンドギャップの内部ではなく、バンドギャップの端(バンド端)に近い部分の影響を強く受けます。そのため、これらの結果は、バンド端に電流値の変化を引き起こす要因として、電子をトラップする準位が存在することを意味しています。実際に、周期的振幅を従来のモデルに基づいて計算すると実験値を再現できませんが、バンド端にトラップ準位が存在すると仮定すると、実験データとの一致が確認できました(図4)。これまでのわれわれの研究から、典型的なトランジスタの場合、バンド端のトラップ準位は絶縁膜と半導体の界面の欠陥に由来することがわかっています(2023年6月12日 産総研プレス発表)。この研究は、トランジスタにおけるスイッチング特性の劣化原因について明らかにしたもので、今回はこの知見が生かされました。この知見に基づくと、観測された長い周期での特性変化は、トランジスタのスイッチング特性の劣化と類似して、絶縁膜と半導体の界面で生じる電子のトラップ現象が原因であることがわかりました。これは、量子ビット素子の長周期特性変化の原因を初めて実験的に解明したものです。量子ビット素子そのものではなく、トランジスタに関する過去の研究があったからこそ明らかになった事実です。今回の研究から、周期的な特性変化の抑制には界面の品質が鍵であることが明らかになり、その向上がシリコン量子ビット素子の安定動作につながるという製造技術に関する指針が得られました。本知見により、シリコン量子コンピューターの研究開発の加速が期待されます。

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