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腸内菌が脳に果たす新たな役割を発見

共同通信PRワイヤー / 2024年12月16日 14時0分


また、腸内菌として知られる乳酸菌(Enterococcus faecium T-110)、酪酸菌(Clostridium butyricum TO-A)、および、糖化菌(Bacillus subtilis TO-A)の3種類のプロバイオティクスの投与が、統合失調症患者の症状を緩和したという報告があります。しかし、それらのプロバイオティクスが実際に脳にどのような影響を与えるかについては詳細に解析されていません。


研究の経緯

産総研は、高次脳機能のメカニズム解明のための基盤技術の開発を目指し、ヒト由来の神経幹細胞の長期培養技術を確立しました(2016年3月28日 産総研プレス発表)。今回の研究では、この培養技術と、マウスの成体脳に存在する神経幹細胞の動態を明らかにする組織解析技術を組み合わせました。この技術の融合により、今回、腸内菌叢の存在が正常な成体神経新生を促す重要な鍵であり、いわゆる「キープレイヤー」として働く可能性があることを見いだしました。さらに、上記の3種類のプロバイオティクスのみで、腸内菌叢が担っているその役割を補うことができることも発見しました。


研究の内容

今回われわれは、成体神経新生における腸内菌の役割を明らかにすることを目指しました。そこで、特定の病原性微生物を保有しない通常飼育下のマウス「SPFマウス」と、全ての腸内菌を持たない「無菌マウス」を用意しました。それらに加えて、無菌マウスに上記の3種類のプロバイオティクスを定着させた「プロバイオティクスマウス」(以下「ProB3マウス」という)も用意しました。これらのマウスにおいて、海馬領域の神経細胞を生み出す神経幹細胞の数を調べました。その結果、ProB3マウスにおいて、神経幹細胞の数が他のマウスと比較して最も多くなっていることがわかりました(図1)。このことは、3種類のプロバイオティクスには神経幹細胞の増殖を促す効果があることを示しています。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412101390-O2-Ts83UUgW


さらに、神経幹細胞から作られたばかりの未発達な神経細胞の数を調べました。その結果、無菌マウスにおいては、未発達な神経細胞の数がSPFマウスと比較して増加していました。一方、長く分岐した神経突起を持つ発達した神経細胞の割合は、SPFマウスと比較して減少していました(図2)。このことは、無菌マウスにおいては、正常な神経細胞の発達が阻害されているため、未発達の神経細胞がSPFマウスよりも多く残されることを示唆していました。ProB3マウスにおいては、発達した神経細胞の割合はSPFマウスと同程度となっていました。このことは、無菌マウスで認められた神経細胞の発達阻害が、たった3種類のプロバイオティクスで解消されることを示唆しています。

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