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硫化水素中毒の解毒剤の開発に成功:複数のガス中毒に対応する救急救命医薬品としての実用化に期待

共同通信PRワイヤー / 2024年12月10日 19時13分

硫化水素中毒の解毒剤の開発に成功:複数のガス中毒に対応する救急救命医薬品としての実用化に期待

 


 

【ポイント】

〇独自の人工ヘモグロビン化合物hemoCDにより、硫化水素中毒の解毒に成功

〇CO中毒および青酸(シアン)中毒の治療薬と同一成分で効果を発揮

〇投与後はすぐ尿として排泄されるため安全性が高く救急救命用途に適している


【概 要】

同志社大学理工学部機能分子・生命化学科北岸宏亮教授らの研究グループは、佐賀大学農学部堀谷正樹准教授と共同で、硫化水素を生体内で捕捉して、それを無毒化する化合物の開発に成功しました。同志社大学の研究グループでは、2023年2月に、一酸化炭素(CO)およびシアン中毒の同時解毒剤として、hemoCD-Twinsの開発に成功しています(2023年2月プレスリリース、図1)¹⁾。今回はこのhemoCD-Twinsの構成成分であるhemoCD-PおよびhemoCD-Iのそれぞれについて、硫化水素に対する結合性能を調査し、その結果hemoCD-Iが生体内の硫化水素の結合部位(ヘモグロビンなど)よりも約10倍程度優れた結合性能を示すことが新たに判明し、中毒の解毒剤として応用できることを明らかにしました。

hemoCDとは、同志社大学の北岸宏亮教授らの研究チームによって研究開発が進められている人工ヘモグロビン化合物であり、ヘム鉄類似のポルフィリンと呼ばれる化合物を環状オリゴ糖であるシクロデキストリンで覆った特徴的な化学構造を有しており、血液中で酸素やCOなどのガスと結合することから、人工血液の素材としての研究が進められています²⁾。


●背景

硫化水素は、火山や温泉地などで自然発生し、腐卵臭を示すガスであり、低濃度(約0.3 ppm、ppmは100万分の1単位)では独特の臭いを発しますが、50 ppmくらいになると嗅覚が麻痺し臭いを感じなくなります。一方それくらいの濃度になると毒性が顕著に現れはじめ、100 ppm以上の濃度で吸入すると死に至る可能性が出てくることになります。空気よりも比重が高いため地下にたまりやすく、石油•ガス生産工場においては最も危険な化学物質です³⁾。硫化水素中毒による死者は例年一定数発生しています(資料1)。下水処理作業、農業施設、あるいは学校での理科実験などにおいても、不意に硫化水素ガスが発生してしまうことで中毒となり、救急搬送される例が年間十数例報告されています。最近では2024年10月13日に中国のバイオ工場で硫化水素中毒による7名の死亡事故が報告されました⁴⁾。さらに2008年以降、家庭内で硫化水素を発生させる自殺や自殺未遂事件が急増し、特に10-30代の若い世代において硫化水素による自殺が蔓延していることが社会問題となっています⁵⁾(「硫化水素使用 1000人超」日本経済新聞夕 刊2009年5月14日掲載)。硫化水素中毒の現場では患者本人だけでなく、その場に居合わせた医師や看護師にも2次被害が及ぶ危険性があります。現在、硫化水素中毒に対し即効性のある治療薬は残念ながら医療実装されておらず、酸素換気でゆっくりと寛解させるしか方法がない状況です(資料2)。過去には青酸(シアン)ガス中毒に用いられる治療薬(亜硝酸アミル等)が用いられたケースも報告されていますが、件数が少ないために効果は十分に検証されていないのが現状です。

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