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育種学や品種改良技術への応用が可能に! 植物受精卵の半球形状を生む細胞壁変形原理を解明

共同通信PRワイヤー / 2024年12月14日 14時6分


 


論文タイトル:A Viscoelastic-plastic Deformation Model of Hemisphere-like Tip Growth in Arabidopsis Zygotes (シロイヌナズナ受精卵の半球状先端成長を再現する粘弾塑性変形モデル)


 


著者:Zichen Kang, Tomonobu Nonoyama, Yukitaka Ishimoto, Hikari Matsumoto, Sakumi Nakagawa, Minako Ueda, Satoru Tsugawa


DOI:https://doi.org/10.1017/qpb.2024.13


 


■ 研究の詳細


・研究の背景


 植物細胞の成長パターンは2つのタイプに分類でき,細胞表面全体が成長する拡散成長と先端のみ成長する先端成長があります.先端成長様式をもつ器官や細胞の例としては,ヒゲカビなどの菌類やシャジクモ仮根などの藻類器官に加え,被子植物の根毛や花粉管などが挙げられ,これまで多くの細胞で成長部位や成長速度が特定されてきました.著者らの先行研究において,被子植物であるシロイヌナズナの受精卵も先端成長様式であることが明らかにされていましたが,一細胞である受精卵がどのような仕組みで先端成長を達成しているかは詳しくわかっていませんでした.このような生物学的な研究発展がある一方で,数理物理学分野では,細胞壁の変形を考慮した細胞力学モデルが考案されており,実際の細胞成長中の形状,細胞表面の力学,細胞壁変形様式を同時進行的に分析することが可能になっていました.そこで,本研究では,実験データで得られる受精卵形状データと細胞力学モデルを相互参照することで,受精卵がどのような力学的原理を使って先端成長を達成しているかを解き明かすことを目指しました.


 


・本研究の成果


 本研究では,まず顕微鏡画像内の細胞形状データを分析することで,受精卵が半球状態を維持しながら成長することを定量的に確かめました(図1).この結果を元に,細胞力学モデル(図2A)において実際の細胞形状データを再現するパラメータを探索したところ,細胞壁変形分布がコサイン型である必要があることがわかりました.さらに,この実データを再現する細胞力学モデルの成長様式が,細胞表面の法線方向に変位するという特殊な様式であることもわかりました(図2B).このような成長様式を限定することで,受精卵の半径と成長速度の時間平均を用いて,実験データと細胞力学モデルを相互参照する形態空間解析(2)を行い,実データに近い細胞力学モデルを再構築することに成功しました.このように,細胞成長を表現するデータ駆動型細胞力学モデルの再構築は,多種多様な植物細胞の変形画像に応用が可能であり,植物細胞の成長メカニズムを知る強力な分析ツールになると考えられます.

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