育種学や品種改良技術への応用が可能に! 植物受精卵の半球形状を生む細胞壁変形原理を解明
共同通信PRワイヤー / 2024年12月14日 14時6分
図2:細胞力学モデルの概要とデータ-モデル同化の結果図.
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202412141701-O4-H8imhAwb】
(A)受精卵成長を再現する細胞力学モデル.細胞形状にかかる内部膨圧に応じて表面張力が生じ(STEP1,STEP2),その張力が部分的に不可逆的な塑性変形を起こすことで(STEP3),細胞成長が実現するモデルである.
(B)受精卵が成長中に半球を維持するには表面の垂直方向に変位する必要があることを示す結果図.
(C)受精卵の伸長速度および先端半径のデータにデータ同化させた結果図.実際の細胞形状をほぼ再現する力学モデルの構築に成功.
・今後の期待
植物受精卵の成長動態を知るためには,顕微鏡観察が有効ですが,顕微鏡の画像だけでは形状と変形のみしか定量化することができません.本研究のように,細胞力学モデルを実際の細胞形状データに同化させる技術の開発によって,”顕微鏡では見えない”表面力学や細胞壁変形量を定量的に議論することが可能になります.このような植物生理学・画像分析・機械工学の融合研究によって,受精卵細胞の成長メカニズムを特定することができるようになります.このように正確な実験データと細胞力学モデルのシミュレーションを相互参照していけば,今後さらに植物科学による詳細な生物学的知見と機械工学による簡潔な力学的知見が融合し,受精卵や初期胚の形態や成長を研究する育種学や品種改良分野の新しい研究アプローチになることが期待されます.
■ 用語解説
(1)粘弾塑性
材料が弾性(変形すると元に戻ろうとするバネの性質),粘性(変形の速さに応じて抵抗力が働く性質),塑性(不可逆的に変形し元に戻らない性質)を同時に合わせ持つ物質の性質を表す.
(2)形態空間解析
細胞の形態を再現する特徴量(伸長速度,半径,最大曲率など)を用いて,実験データと数理モデルを対応づける解析手法を指す.
■ 研究体制と支援
本研究は,秋田県立大学(康子辰 博士研究員, 野々山朋信 博士研究員, 津川暁 助教),東北大学(植田美那子 教授)との共同研究として行われました.
本研究は,文部科学省の科学研究費補助金(JP19H05670, JP19H05676,JP20K15832, JP22K15135, JP22K21352, JP23H02494, JPMJCR2121),公益財団法人サントリー生命科学財団(SunRiSE)と公益財団法人東レ科学振興会(20-6102)の支援を受けて行われました.
関連URL:https://kyodonewsprwire.jp/release/202412141701
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