量子の世界で「冷やす」を測る
共同通信PRワイヤー / 2025年1月11日 15時0分
開発の社会的背景
微細加工技術によって作製されたマイクロメートルスケールの電気回路では、極低温下で量子力学的な現象が現れます。これを利用すると、従来の技術では到達できない計算能力や計測感度が実現するため、量子技術の開発に世界的な注目があつまっています。近年、このような量子回路において、超伝導体と常伝導体を接合した素子(超伝導・常伝導接合)に光子吸収能力があることが実証され、量子回路冷却器(QCR)と呼ばれ研究が進められています。例えば、このQCRは、光子を閉じ込めるための共振器を介して超伝導量子ビットと接続されると、量子ビットからエネルギーを奪い、量子ビットを高速に初期化できます。現在開発が進む量子誤り訂正を含む量子コンピューターでは、量子ビットの初期化を繰り返し行う必要があるため、高速で忠実度の高い量子ビットの初期化技術の実現が待たれています。量子回路冷却は、このような量子ビットの高速な初期化を実現するための有望な手段である一方で、これまでQCRによって共振器からエネルギー(光子)を吸収した直後に、共振器にどの程度のエネルギー(光子)が残っているかを調べることはできていませんでした。これは、量子回路冷却の研究に用いられてきたエネルギー測定が、光子吸収量よりも何十倍も大きな測定回路中に置かれた増幅器の雑音の影響を避けられないためです。共振器中に残されたエネルギーは、量子ビットを誤動作させる要因となるため、冷却後に共振器に残されたエネルギーを高速で高感度に測定する技術が必要とされています。
研究の経緯
産総研と東京理科大学は、超伝導・常伝導接合によって超伝導量子ビットの性能を低下させず高速かつ高忠実度に初期化する技術を開発しました(2023年10月31日 産総研プレス発表)。
今回、超伝導・常伝導接合が共振器から光子を吸収する際に超伝導量子ビットの励起周波数が変化する現象に着目し、光子吸収後に量子ビットを分光測定することで共振器に残っている光子数を計測しました。
なお、本研究開発は、JSPS科研費20KK0335と20H02561の助成を受けました。
研究の内容
本研究では、「超伝導共振器」、「超伝導・常伝導接合」、「超伝導量子ビット」が結合した素子を作製し実験を行いました(図1)。産総研と東京理科大学は共同で素子を開発し、産総研内施設において、共同で実験を行いました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501082604-O2-R5iudt8D】
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