塵も積もれば山となる?低濃度のリン酸塩でもサンゴの生育を阻害
共同通信PRワイヤー / 2025年1月10日 14時0分
稚サンゴの飼育実験から負荷量の重要性を検証
ポイント
・ 稚サンゴを飼育する海水の量やリン酸塩濃度を変えて骨格形成量を算出
・リン酸塩濃度だけでなく負荷量(濃度×流量)が骨格形成に影響を与えることを発見
・ サンゴ保全に向けて、廃水処理などの対策に新たな知見
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501092638-O1-p124gn5d】
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)地圏資源環境研究部門 飯島 真理子 研究員、地質情報研究部門 井口 亮 主任研究員、鈴木 淳 研究グループ長と、北里大学 安元 剛 講師、琉球大学 安元 純 助教(総合地球環境学研究所・共同研究員)らは、稚サンゴの飼育実験と骨格観察により、リン酸塩の濃度とサンゴの骨格形成の関係を明らかにしました。
近年、海水温上昇や沿岸開発といったさまざまな要因によるサンゴの減少が問題となっていますが、その原因の1つとして、陸域から供給される過剰な栄養塩の影響が挙げられます。栄養塩のなかで、サンゴの生育海域において約0.5 µM以下という低濃度でしか検出されないリン酸塩は、植物プランクトンの増殖促進によりサンゴに二次的な影響を及ぼすものの、直接的な影響はないと考えられてきました。近年、リン酸塩がサンゴの骨格表面に吸着することで骨格形成を阻害し、リン酸塩濃度が5 µM以上から影響が見られることが分かってきました。しかし、飼育実験でサンゴの骨格形成に影響を引き起こすリン酸塩の濃度は約5 µMで、実際の環境中の濃度とは隔たりがあることから、リン酸塩のサンゴに対する直接の影響については確証が得られない状況でした。また、海水中のリン酸塩の濃度ではなく、リン酸塩の負荷量がサンゴの骨格形成へどのように影響するかは検証されていませんでした。
今回、海水中のリン酸塩の濃度や飼育海水量を変えて、稚サンゴの飼育実験を行い、骨格の観察・重量測定を行い、骨格形成量を算出しました。その結果、リン酸塩濃度だけでなく飼育海水量が増加すると骨格形成量が低下することが分かりました。リン酸塩の濃度が低い海域でも、流量が多いとサンゴの生育に悪影響となる可能性が示唆され、サンゴ保全に向けた陸域負荷の対策を後押しする新たな科学的知見が得られました。
なお、この技術の詳細は、2024年12月17日に「Marine Pollution Bulletin」にオンライン掲載されました。
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