高周波通信に貢献する圧電薄膜の作製に成功
共同通信PRワイヤー / 2025年1月21日 14時0分
研究の内容
本研究ではScAlNの薄膜を作製する際にルテチウム(Lu)金属を下地層として導入し、圧電性を有するウルツ鉱相の結晶性や配向性の向上を試みました。ウルツ鉱相は図1に示すようなウルツ鉱構造で構成された結晶相で六方晶系に分類されます。Luは結晶構造がウルツ鉱構造と同じ六方晶系であるため(図1)、高濃度にScを添加したScAlNの結晶性や配向性の維持を促す効果があると期待したためです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501203092-O2-qjSdLcpr】
その結果、これまでは43 mol%がSc固溶量の最大と考えられていたところ、AlNへのSc固溶量は50.8 mol%まで向上しました。作製した薄膜の断面組織の電子顕微鏡写真より、Luの下地層を導入したScAlN薄膜ではウルツ鉱構造の結晶性や配向性が向上している様子が確認されました(図2)。これらの薄膜で実際に圧電定数を測定したところ、2018年に報告された41 mol%のSc固溶量における31.6 pC/Nの記録を大きく更新し、35.5 pC/Nの圧電定数を得ることに成功しました(図3)。この値は、Luの下地層がない場合と比較して、第一原理計算で予測された値に近づいており、ScAlNの潜在的な圧電性能を引き出すことができたことになります。そして、他のAlN系圧電材料と比較しても最も高い圧電定数であることがわかります(図4)。これまで、Scを多く固溶したScAlNでは高い結晶性や配向性の薄膜が得難いため、Sc固溶量の増加による圧電定数の向上には限界があると考えられてきましたが、薄膜作製の工夫により性能向上の余地があることが示されました。
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今後の予定
今回の研究で見いだした成果は、高周波通信で使用する弾性波フィルターの性能向上への展開が期待できます。また、AlNは圧電性を利用して、自動運転などに欠かせない距離センサーへの応用も検討されており、センサーの感度向上につながる材料としても発展性があります。今後は、これらのデバイスへの実用に向けて、薄膜の膜厚の最適化など実操業を見据えた技術開発に取り組みます。さらに、ScAlN薄膜により高濃度のScを含有させる技術の進展と、他の材料系への展開にも取り組む予定です。
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