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過去100年間における根尾谷淡墨桜の真の開花日・満開日・満開終了日・開花終了日を推測

共同通信PRワイヤー / 2025年2月6日 8時30分

図1 満開の根尾谷淡墨桜(2016年4月6日、杉山新次郎撮影)。


 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501313659-O5-B30OB1Dy

図2 藤原博龍により1955年以降、目視観察とカメラ撮影により記録されている根尾谷淡墨桜の開花季節資料の一部(2023年7月5日、永井 信撮影)。


 

研究背景

 地球温暖化をはじめとする気候変動は、生態系が四季折々に提供する供給や文化的な生態系サービスにとどまらず、光合成や蒸発散などの植生機能を介して、炭素・熱・水循環に対して大きな影響を与えています。このような気候変動と植生の関係性を深く理解するためには、開花・開葉・紅葉などの植物季節を過去から将来にわたり高精度に調査することが重要な課題となります。例えば日本では、人々の関心が非常に高いソメイヨシノを対象に、全国の気象台において、1953年以降標準化された手法により開花日と満開日が継続的に観測されています。これらの観測記録に基づいて、ソメイヨシノの開花日や満開日を半経験的に推測する統計モデルや、機械学習の手法を応用した推測手法が開発されました。しかしながら、特に、(1)満開終了日や開花終了日を推測する手法がない、(2)半経験的な統計モデルでは、詳細な気象データと最適な係数の決定が必要であるという問題点がありました。


研究成果

 前述の問題点を解決するため我々は、ベイズ推定による状態空間モデルの推測という手法を応用し、近隣の地点において観測された気象データであっても適用可能な、根尾谷淡墨桜の真の開花日・満開日・満開終了日・開花終了日を推測するモデルを開発しました。満開日を例にあげると、真の満開日とは、直接観測できない「真の満開の状態」を示します。これに対して、観測された満開日(観測値)は、観測者の判断基準や観測条件(日時や天候、光環境)などを要因とした系統的な誤差を含むため、真の満開の状態を示すとは限りません。従来の半経験的な統計モデルでは、推測誤差が最も小さくなるような唯一の満開日を予測しようと試みるのに対して、我々のモデルでは、真の満開日の分布を確率として予測する(例えば、数十万通りの計算結果を分布として出力する)点に大きな違いがみられます。

 桜の開花プロセスは、花芽の自発休眠解除のための冬季の低温要求と、自発休眠解除後の花芽の成長のための温度要求によって説明されることがよく知られています。低温要求と温度要求の量や期間は、気候によって違いがみられます(とくに年平均気温が高い地域では他の地域と比べて大きく異なる)。このため、従来の半経験的な統計モデルでは、推測精度を向上させるために、低温要求と温度要求の量や期間を対象地点ごとに見積もる必要がありました。これに対して、我々のモデルでは、低温要求と温度要求の量や期間を正確に見積もる必要はなく、低温要求と温度要求に関する説明をおおまかにモデルに組み込むことができます。

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